米国のドナルド・トランプ大統領がウクライナの和平の道を探る中、同国に対するロシアの攻撃には終わりが見えない。実際、ここ数週間はウクライナ侵攻で最も多くの死傷者が出た時期だった。これは西側の首脳が無視することのできない極めて重要なメッセージを伝えている。ロシアはウラジーミル・プーチン大統領が望むすべてを手に入れることができなければ、ウクライナ侵攻を終結させる意思はないのだ。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は現在も続く攻撃について、「今この瞬間にも、ロシア軍は（ウクライナの）ハルキウ、ザポリッジャ、スミ、オデーサの各州を攻撃し、住宅や民間施設を破壊している」と非難し、次のように訴えた。「ロシア軍は意図的に人々、特に子どもたちをを殺害している。ハルキウを狙ったドローン（無人機）攻撃では、現時点までに7人が死亡し、最年少はわずか1歳半の女児だった。負傷者は子どもを含む数十人に及んでいる。ザポリッジャではミサイル攻撃により20人が負傷し、3人が死亡した。ロシア軍は問題を抱えながらも、人々の命を奪い続けている。プーチンはウクライナと欧州への圧力を維持し、外交努力に屈辱を与えるために、見せしめ的な殺害を敢行するだろう」
ゼレンスキー大統領の発言は、複数のデータによって裏付けられている。国連の推計によると、ウクライナの民間人の死傷者は少なくとも1674人（死亡286人、負傷1388人）に上り、この数字は7月も引き続き増加し、侵攻開始初期の2022年5月以降、月間の死傷者数としては最多を記録した。
国連は次のように報告している。「7月のウクライナの民間人の死傷者数は、前年同月比で22.5％増加した。6～7月にかけての民間人の死傷者数の増加は、主に前線沿いのウクライナ政府が支配する地域で発生しており、領土を奪取しようとするロシア軍の激しい戦闘を反映している。ロシア軍からの空爆によるウクライナの民間人の犠牲者数は、6月には114人（死亡34人、負傷80人）だったが、7月には276人（死亡67人、負傷209人）となり、これまでで最も著しく増加した」。これらの数字がすべてを物語っている。ロシアは平和構築に向けて攻撃を弱めることはなく、むしろ激化させているのだ。
プーチン大統領がトランプ大統領との対話に応じたにもかかわらず、ロシア軍は数カ月前からウクライナへの攻撃を激化させている。例えば、6月は侵攻開始以降の3年余りで最も多くの民間人の死傷者を出した月の1つとなり、232人が死亡、1343人が負傷した。ロシア軍は同月、前年同月比で10倍に及ぶミサイルと徘徊型兵器による攻撃を実施した。
