ヘルスケア

2025.09.04 10:15

村上春樹の仕事作法と「何かに燃えている人」の理想像

Getty Images

(3)環境を整える

advertisement

最後のポイントが「環境を整える」ことです。

情報過多や選択肢過多は私たちの意思決定を阻害します。

「環境を整える」とは、自分がやりたいことに集中しやすくなる=燃えやすくなるように、環境をチューニングするという意味です。

advertisement

スマホゲームや、ついつまんでしまうお菓子などが本当にやるべきことの邪魔になるなら、それらを遠ざけてしまう、という方法論ですね。

たとえば、タイマー式ロックのついたコンテナにスマートフォンやお菓子を入れてしまえば、そのタイマーが切れるまでは、それら以外をするしかありません。

作家としても活躍する芸人の又吉直樹さんは、本棚以外は机と執筆用のパソコンしかない仕事部屋を借りているそうです。お金はかかりますが、これも環境を整えるやり方の1つです。

自分のいる場所、時間の使い方、部屋や机の整理整頓などによって、本当にやりたいこと、燃えたいこと以外の情報量や選択肢の数を減らす。

それができれば、その他の情報や選択肢に脳のメモリを奪われることも避けられ、やりたい行動に集中しやすくなるわけです。

『燃えられない症候群』(サンマーク出版)
『燃えられない症候群』(サンマーク出版)

理想は村上春樹さん

この3つをしっかりと押さえている理想像が、小説家の村上春樹さんです。

毎日執筆する時間を決めていることで有名な村上さん。

私はたまたまご縁を得て、直接伺ったことがあるのですが、書くことが思い浮かばなくても、必ず朝の決めた時間に机の前に座るそうです。

そうすれば、なんだかんだと書けてしまうとのこと。

完全に「とりあえずやる」と「ルーティン化」の合わせ技ですよね。

きっと机の上も、執筆に集中できる環境が整っているのではないでしょうか。

村上さんは『走ることについて語るときに僕の語ること』(文春文庫)で、小説家にとって最も重要な資質は「才能」、その次に重要なのは「集中力」であるとした上で、こう書かれています。

僕は普段、一日に三時間か四時間、朝のうちに集中して仕事をする。机に向かって、自分の書いているものだけに意識を傾倒する。

1979年のデビューから約半世紀。村上さんの文筆業への火を支えるものこそが、「とりあえずやる」「ルーティン化」「環境を整える」なのかもしれません。

注:記事中リンクから商品の購入などを行なうと、編集部に収益が入ることがあります。また事業者は、商品の選定や記事内容には一切関与していません。

文=堀田秀吾/言語学者(法言語学、心理言語学)、明治大学教授

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事