そんな些細な変化に反応してしまうのも、大昔の人類には、周囲を警戒しなければ生き残れないほど危険が多かったからです。
猫がネズミのおもちゃに反応するように、私たちにも動くものを気にしてしまう本能が残っているんですね。
軽い内容の動画であっても、人や背景、文字などが動くだけで、それらに無意識のうちに注目してしまう。
そして意識をとられると、脳は否応なしに稼働します。
脳は体積としては人体全体の2%しかないのに、エネルギーは20%も使っています。
ですから、受動的にながら見していると疲労を自覚しにくいものの、脳は確実に負荷を受けているのです。
それでは、動画のながら見さえやめればいいのかというと、残念ながらそうではありません。
「それでも自分はやっぱり燃えたい……!」と密(ひそ)かに思う人の、心の中の小さな火種にすらも、情報過多時代は冷や水をどんどん浴びせかけてくるのです。
「やらないほうがマシ」を生むネガティビティ・バイアス
現代では、気になることについての動画を簡単に視聴できます。
これにより、私たちは「擬似体験」が簡単にでき、実際に体験せずとも「知ったつもり」になってしまいがちです。
ところが、この「知ったつもり」には大きな落とし穴があります。
動画で見る情報は、成功例だけでなく失敗例も多く含まれているからです。
人間には生まれつき「ネガティビティ・バイアス」という認識の傾向があり、ネガティブな情報に注目し、それを長く記憶する傾向にあります。
そのため、私たちは無意識のうちに、ネガティブな結果を予想させる情報ばかりを集めてしまいます。
この状態で現状維持バイアスも働くと、「やらないほうがいいかな」と思って行動に移せなくなってしまうのです。
さらに現代特有の問題があります。
昔の濃いコミュニティによる監視は減りましたが、代わりにSNSによる「新たな相互監視社会」が生まれています。
そのため、たとえやる気に満ちた人でも「失敗してSNSで笑われたら嫌だな」「LINEグループでいじられそうだからやめておこう」と尻込みしてしまうのです。
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