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2025.09.04 13:30

マーマレード世界最高賞の裏に「フルーツ王国福島」復活への思い:齋藤礼奈、阿部杏奈

齋藤礼奈、阿部杏奈|Gela 319

齋藤礼奈、阿部杏奈|Gela 319

今年4月、英国で開催されたマーマレードの品評会「ダルメイン世界マーマレードアワード」。世界30カ国以上から3200瓶以上がエントリーするなか、最高賞3瓶のひとつに選ばれたのは、福島県の小さなジェラート店「Gela319」が出品したマーマレード。初参加の昨年は沖縄のシークヮーサー、今年は愛媛のレモンで、2年連続最高賞受賞の快挙を成し遂げた。

齋藤礼奈(写真右)がいとこの阿部杏奈(同左)と営むその店は、福島県の最北端、稲作と果樹栽培が盛んな伊達郡国見町にある。沖縄を旅行中に出合ったジェラートに衝撃を受け、一念発起して自身で店を立ち上げた。そこには「福島の農産物でおいしい商品をつくって地元を元気づけたい」という強い思いがあった。

2人が生まれ育った国見町は、東日本大震災後の原発事故により放射性物質の汚染被害を受けた。「怖かったけれど、役に立ちたくて」と除染作業に手を挙げた。作業現場で耳にした農家の悲痛な声や、活気を失った故郷への思いが心を動かした。

福島の果物や牛乳をはじめ県内外から食材を取り寄せ、試作を繰り返した。柑橘類を砂糖で煮てジェラートに使ってみようとマーマレード製造を開始し、手探りで研究を重ねた品が世界一に輝いた。

受賞作はロンドンの老舗百貨店でも販売され、瞬く間に完売。次の目標は「福島産の果物で世界一」。


さいとう・れな◎1984年、福島県生まれ。夫の家業の水道設備会社を手伝い始め、震災後は除染作業に従事。2018年、Gela319開業。

あべ・あんな◎1992年、福島県生まれ。齋藤と共に除染作業に携わる。JA勤務などを経てGela319に参画。

文=大滝美恵子 撮影=吉澤健太

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