従業員がしぶしぶ残留することに伴う、隠れたリスク
自分の仕事に不満を感じる従業員は、無気力になる。最低限の仕事しかせず、それ以上のことにはほとんど手を付けない。イノベーションなどどうでもよくなるのだ。
そうした姿勢の従業員は、生産性が低下し、燃え尽きやすくなる。不満を口にすることが増えるので、熱心に取り組んでいたチームであっても、あっという間に全員が消極的になってしまうことがある。
一方で、景気が上向くと(必ずそうなる)、企業は、従業員の一斉転職で不意を突かれ、深刻な打撃を受けてしまうおそれがある。主力メンバーが率先して会社を去った場合には、影響はさらに大きい。
企業側はどうすればいいのか
業務に関する問題が生じたら、即刻対処する:問題が自然に解消されることを期待するのは、賢いやり方とはいえない。マネージャーなど中間管理職を対象に、部下との気まずい話し合いに対処する方法を指導し、責任を持って対処させよう。
事前に対策を講じる:従業員が辞めないからといって、彼らが満足していると決めてかかってはいけない。コミュニケーションを強化しよう。実践してほしいのは、従業員を毎週、自分のオフィスに招いて、コーヒーを飲みながら気軽に話す場を設けることだ。私はこれを「コーヒー・タイムアウト」と呼んでいる。気前よく振舞いたかったら、軽食を用意するのもいいかもしれない。話すより聞くことに注力し、部下が職場や仕事について感じていることを把握しよう。
問題の核心に切り込む:問題の根本原因に対処しよう。言うまでもないことだが、従業員たちは、キャリアアップや、柔軟に働ける職場、公正な報酬、強いリーダーシップを求めている。彼らの要求に応じよう。そうすれば、しぶしぶ働き続けている従業員も、会社に忠実で、熱心に働く従業員に一変するだろう。
今後のために備える:従業員が楽しく働き、顧客が喜んで取引したくなるような、確かな企業文化を築こう。そうすれば、今後、従業員が自発的に離職していく流れが再び押し寄せても、持ちこたえられるはずだ。
「大残留時代」は、ちょっと見たところ、ありがたいことに思えるかもしれないが、時限爆弾のようなリスクをはらんでいる。見て見ぬふりをするのは危険だ。


