米国で頻発する集団訴訟では、被害者への和解金が小切手や銀行振込だけでなく、プリペイドカードで支払われることもある。その未使用残高や手数料の仕組みにより、カード発行会社が和解金管理会社に「秘密のリベート」を渡し、消費者に届く資金が減っている可能性が浮上した。フォーブスによる5月の報道を受け、メタ(旧フェイスブック)が合意した7億2500万ドル(約1065億円。1ドル=147円換算)のプライバシー訴訟和解金を巡り、カリフォルニア州の裁判所がこの不透明な仕組みの調査に乗り出している。
メタのプライバシー訴訟和解金約1065億円を巡る疑惑
今から3年前、フェイスブックの親会社メタは、ユーザーの同意なしにデータを利用可能にしたとして訴えられた集団訴訟で、7億2500万ドル(約1065億円)を支払って和解することに同意した(メタはこの不正行為を否定した)。この和解金は、今月になってようやく消費者への支払いが始まる予定だったが、先日の裁判所への提出書類によると、デジタルのプリペイドカードを通じて送られる予定だったこの和解金の一部が、今や厳しい法的精査の対象となっている。フォーブスの試算では、このデジタル支払いの総額は1億5000万ドル(約2205億円)に及ぶ。
ブラックホークとアンジオンの秘密リベート
今回の疑惑の発端は、デジタルカードの発行元のフィンテック企業ブラックホーク・ネットワークが、集団訴訟の和解金を被害者に配分する責任を持つ請求管理会社アンジオンに、秘密裏にリベートを支払うことに同意していた点にある。メタの訴訟でアンジオンを雇った原告側弁護士は、別の訴訟を通じて不正の兆候に気づき、この数カ月でようやくそれを把握した。
その後、弁護士らはアンジオンに対し、ブラックホークからのリベートを放棄するか、あるいは原告である消費者に還元するよう求めた。しかし、これまでのところ、アンジオンはリベートを放棄することも、ブラックホークとの契約を開示することも拒否している。
フォーブスは、数カ月前の調査記事で、ブラックホークを含むプライベート・エクイティ傘下の企業が、集団訴訟の和解金を密かに懐に入れていた実態を暴き出し、こうした水面下の取引が業界で常態化していることを明らかにした。
プリペイドカードを使った和解金支払いの仕組み
集団訴訟の和解金を受け取る消費者は、多くの場合、小切手や銀行口座への直接入金、ペイパル、あるいはプリペイドカードなどの複数の受け取り方法から選べるようになっている。デジタルのプリペイドカードはメールで届き、管理コストが安く済み、また銀行口座を持たないアメリカ人にとっても利用しやすいという利点がある。しかし、そこに入金された資金のかなりの部分はギフトカードと同様に使われずに残り、業界関係者が「ブレイケージ(breakage)」と呼ぶ未使用分が残ったままになる。和解金が消費者に届かず、カード発行会社や和解金管理会社の隠れた利益になるのだ。
未使用残高と、手数料による隠れた利益
ブラックホークのようなカード発行会社は一般的に、プリペイドカードが6カ月間や12カ月間使われなかった場合に、これらの未使用残高の大部分を、月額手数料を通じて取り戻している。ブレイケージ(隠れた利益)の総額は、手数料がいつ発生するか、またその額がどの程度かによって変動するが、消費者にとって最も良心的なプログラムであっても、大規模な集団訴訟では容易に数百万ドル(数十億円)規模に達する。それにもかかわらず、ブレイケージの金額が裁判所に開示されることはない。そしてごく最近まで、原告側の弁護士や判事は、デジタルのプリペイドカードがどのような仕組みで動き、誰が未使用残高を懐に入れているのかをほとんど把握していなかった。



