日本の”ものづくり”が強みになる
藤吉:日本発の宇宙ベンチャーの規模というのは世界的に見て、どうなんでしょうか。
出路:現状では数はまだそこまで多くはないと思います。ただ、宇宙産業は”ものづくり”が絡んでくるので、日本にアドバンテージがあるだろうというのが僕らの3つ目の投資仮説です。単純に比較はできませんが、1950年代の自動車産業でいえば、世界で1000万台生産されているうち、日本はわずか3万台でした。
つまり最初は家族産業的に一台ずつ組み立てていたのが、やがてトヨタ生産方式に象徴されるサプライチェーンが整備されることで飛躍的に成長を遂げ、30年後には約1100万台を生産し、世界一になった。今の日本の宇宙ベンチャーを見ていると、まさに黎明期の自動車産業的な“ものづくり”の空気があるんですよね。
だから今後、自動車産業のようにサプライチェーンができてくれば、宇宙産業も日本を代表する産業になるんじゃないかな、と思っています。
阿部:結局、宇宙でもフロントランナーはトヨタなんですよね。仮に最先端のロケット技術で世界一ではなかったとしても、今後、宇宙産業が成長して、そこに必要なあらゆるものを量産する必要が出てきたときに、活躍するのは日本だと思う。
藤吉:実はここに名前のあるAstroscale(宇宙ゴミの除去や軌道上サービスを手がける日本発の宇宙スタートアップ)の創業と私たちの雑誌の創刊が近くて、創刊2号の表紙として登場してもらいました。そのとき岡田光信社長に「藤吉さんに見せたいものがあるので、どうしても茅ヶ崎に来てほしい」と言われて、連れていかれたのが由紀精密(神奈川県茅ヶ崎市に本拠を置く精密切削加工メーカー)だったのです。
で、岡田さんが「ここの切削加工技術はピカイチだ」と。ここで作っている「精密コマ」というコマを回しても遠心力が働いて、回っているのに静止しているようにしか見えないほど安定している、それは精密切削の技術力が凄いからだ、と力説されたんですね。それで実際にAstroscaleは由紀精密と提携して、人工衛星の製作を行っている。こういう製造業がもつ技術力を宇宙へと繋げる発想というのは、面白いなと思いました。
阿部:やっぱり大事なのは経営者の情熱なんですよね。


