宇宙産業を「3つの投資仮説」から考える

阿部修平 スパークス・アセット・マネジメント代表

宇宙の利用コストは大幅に下がっている

出路:ただ宇宙ファンドといっても最初は全然集まらなかったんです。それが2019年にトヨタさんがJAXA(宇宙航空研究開発機構)と組んで「有人月面探査車(愛称:ルナクルーザー)」計画を発表されてから、潮目が変わってきた。ここから、トヨタさんにも入ってもらって2020年に「宇宙フロンティアファンド」ができたという経緯になります。

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藤吉:これでispeceの事業とも繋がったわけですね。

出路:その通りです。ファンドを立ち上げるにあたっての投資仮説があって、ひとつが「宇宙の利用コストは大幅に下がっている」ということなんです。例えば衛星の打ち上げコストは40年前の10分の1に、衛星の通信コストも15年前の7分の1に下がっています。

藤吉:これはちょっとびっくりするグラフですね。こんなに安くなってるんですね。

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出所)McKinsey Technology Trends Outlook 2022 1.数値は公表された情報と専門家の推定による分析に基づく推定値のみ反映
出所)McKinsey Technology Trends Outlook 2022 1.数値は公表された情報と専門家の推定による分析に基づく推定値のみ反映
出所)McKinsey Technology Trends Outlook 2022 1.数値は公表された情報と専門家の推定による分析に基づく推定値のみ反映  2.GEO:Geosynchronous Equatorial Orbit=静止赤道軌道 3.打ち上げ年は企業発表による実際の年、または計画年
出所)McKinsey Technology Trends Outlook 2022 1.数値は公表された情報と専門家の推定による分析に基づく推定値のみ反映 2.GEO:Geosynchronous Equatorial Orbit=静止赤道軌道 3.打ち上げ年は企業発表による実際の年、または計画年

出路:そうなんですよ。もうひとつの投資仮説が結構大きくて、「日本の宇宙関連予算は5年前と比べて倍増している」。宇宙関連ビジネスの難しいところって、技術としては面白いけど、お客さんがいないですよね、ということだったと思うんです。けれど今なら、政府がお客さんになってくれる。

出所)内閣府資料を参考にSPARX作成
出所)内閣府資料を参考にSPARX作成

阿部:僕らが「宇宙フロンティアファンド」を立ち上げた当時で、NASAとJAXAの予算を比較すると、前者が約226億ドルで後者が約17億ドルですから、JAXAはNASAの13分の1の予算しかなかった。だからこれは民間資本を投入しなきゃいけないというのが、ファンドを立ち上げた理由ですが、政府も本腰を入れ始めたのは大きいですね。

出路:1号ファンド(92億円)の投資先は14社ですが、2025年8月時点でispace、Astroscale、Synspectiv、AXELSPACEの4社が上場しているので、意外と成績がいいんです。とくにSynspectiveは、最先端のSAR衛星を使った地球観測と分析ソリューションを提供している企業ですが、ビジネスの作り方が上手で既に時価総額で1000億を超えています。2024年に設立した2号ファンドからは、2025年8月時点で4社に投資しています。

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text by Hidenori Ito/ photograph by Kei Onaka

連載

市場の波に乗る12の視点 スパークス代表・阿部修平×Forbes JAPAN 編集長・藤吉雅春

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