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2025.08.27 10:30

高騰するAI運用コストを削減、脱エヌビディア依存で「AIの民主化」に挑む新興勢力

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企業収益へのインパクト

推論コストの低下は、ビジネスのあり方を大きく変えるだろう。例えば、Shopify(ショッピファイ)のセラーは、高額なクラウドインフラに依存せず、ローカル環境でプライベートAIモデルをトレーニングして運用できるようになる。個人で事業を営む起業家であれば、数年分の顧客メールを活用し、3万ドル(約442万円)のGPUではなく、わずか10ドル(約1470円)のチップでセールスアシスタントを微調整し、稼働させることが可能だ。さらに、チューターリングプラットフォームにおいては、専任のインフラチームを抱えることなく、パーソナライズされたレッスンプランを提供できるようになる。

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こうした変化は、すでに現実のものとなっている。小規模なチームが自社ファイアウォール内にドメイン特化型のコパイロットを構築したり、独立系コンサルタントがノートPC上でマルチエージェントAIワークフローを走らせる事例も珍しくない。このことは、推論コストが技術的課題であることに加え、AIを開発に組み込めるかどうかを左右するゲートキーパーとして機能していることを示している。

Positron AIをはじめとする企業が成功すれば、現在月額300ドル(約4万4200円)のAI利用コストは、わずか30ドル(約4420円)にまで圧縮される可能性がある。さらに、ユーザーがプライベート環境で手頃に実行できるツールに置き換わることも想定される。そうなれば、AI利用者の裾野は格段に広がるだろう。

エヌビディアの独占に変化の兆し

現在、エヌビディアはAIインフラをほぼ独占しており、その影響力は、誰がAIを活用できるかということにまで及んでいる。同社のチップは、世界の生成AIシステムの大半で使われており、CUDA、TensorRTといったエコシステムが他社製品への切り替えを困難にしている。その結果、高額の費用を負担できる者だけが参入できる仕組みが形成されている。

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しかし、Positron AIやGroq、Cerebras Systems、Sambanova Systemsといった新興勢力によってAIの経済性が変化すれば、エヌビディアの独占体制は揺らぎかねない。これらの企業は推論コストを大幅に引き下げ、小規模チームや個人であっても、高価なクラウドインフラに依存せずに強力なモデルを稼働できるようにしている。

この変化は、広範な影響をもたらす可能性がある。ユーザーは、AIツールの利用に毎月数百ドルを支払うのではなく、カスタムアシスタントや自動化、ワークフローなどを自らが管理するハードウェア上でローカルに稼働させることが可能になる。これにより、中小企業やフリーランサー、教育者、スタートアップにとっては制御性やカスタマイズの自由度が高まると同時に、コストと参入障壁が大幅に低下することになる。

推論が手頃な価格になれば、イノベーションは一部の特権ではなく、社会のインフラへと変化する。なぜならば、コストの民主化はAIのコントロールを分散化するからだ。次なるAI業界の勝者は、最大のモデルを構築した者ではなく、それをいかに低コストで稼働させられるかを実現した者になるだろう。そして、その追求こそが、時価総額4兆ドル企業の独占を打破する方法だと言える。

forbes.com 原文

編集=朝香実

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