北米

2025.08.31 15:00

「飲酒は少量でも害」説に強力な反論者現る──ワイン業界のキーパーソンに聞く

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またジーノは、ワインの楽しみ方を伝えるポジティブなキャンペーンや団体をいくつか紹介してくれた。そのなかには、ジーノがカレン・マクニール(ワイン専門ライターおよびエデュケーター)、キンバリー・チャールズ(ワインPRの専門家)とともに立ち上げたキャンペーン「Come Over October――毎年10月にワインを囲んで集まろう、という意)」も含まれている。この団体はイベントを主催するほか、ワイナリーが主体となって「Come Over」イベントを開催できるよう支援を行っている。

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「このキャンペーンは業界の大きな支持を集めており、ワインを愛する人、そして未来の愛飲家にポジティブなメッセージを届けています。ただ、より多くの消費者に訴えるには、さらに多くのワインメーカーや業界団体の協力が必要です」

このほかにも、ワイン・アメリカ(Wine America)の「The Magic of Wine」キャンペーン、ワイン・マーケット・カウンシル(Wine Market Council)のソーシャルメディアキャンペーン「Wine Is」、ソノマ・カウンティ・ヴィントナーズ(Sonoma County Vintners)の「Wine is Us」キャンペーン、そしてナパ・バレー・ヴィントナーズ(Napa Valley Vintners)の「Why Wine Video」キャンペーンなども、ワインの魅力発信に貢献している。

さらに州や地域ごとのワイナリー協会も数多く存在し、適度な飲酒の推進や、小規模ワイナリーが愛飲家とつながる取り組みの支援も行っている。こうした協会は、カリフォルニア、ワシントン、オレゴン、ニューヨーク、バージニア、テキサス、オハイオ、ミズーリといった著名なワイン生産州に限らず、アイダホ、ノースカロライナ、ニュージャージー、フロリダといった比較的小規模な生産州にも存在する。

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コランジェロ&パートナーズ社長、ジーノ・コランジェロ(左端)。ニューヨークのイベントに参加したシェフらと(Getty Images)
コランジェロ&パートナーズ社長、ジーノ・コランジェロ(左端)。ニューヨークのイベントに参加したシェフらと(Getty Images)

反ワイン記事にどう対抗すべきか

過去1年間、数多くの反アルコール記事がメディアを賑わせたことを考えると、こうした報道が消費者心理を冷え込ませている可能性は高い。それにしても、ほんの数十年前までは、ワイン(特に赤ワイン)は健康に良いと称賛され、米ドキュメンタリー番組「60ミニッツ」でもかの「フレンチ・パラドックス」説(動物性脂肪の多い食生活をしているフランス人が動脈硬化性疾患にかかりにくい理由は、赤ワインにあるとする説)が紹介されたほどだったのに、なぜ今ではまったく逆の説が主流になってしまったのだろう。

「残念ながら、今は反ワイン・アルコール派の声が大きく、世論をリードしている状況です。しかしワイン(およびアルコール全般)は『少量でも有害』という研究結果がある一方で、『適度な摂取は問題ない』、あるいは『むしろ健康に良い』とする研究も存在します。ですから私たちが今すべき最善の対応は、ワインのポジティブな側面を発信し、反ワイン派との啓蒙合戦に勝つことだと考えています」

インタビューの終盤、ジーノは「より手頃な価格のワインを提供することも、解決策の1つかもしれない」と付け加えた。「私はニューヨークに住んでいますが、グラスワインの価格にはいつも驚かされます。大抵もっとも安いものでも15ドル(約2200円)で、あとはそれ以上の価格です。特に若い人にとっては、まだ飲んだこともないワインにそれだけのお金を払うのは大きな負担でしょう」

「ワインメーカーやレストランは、入門者向けワインの価格設定について再考する必要があると思います。ワイン専門店の棚には、1本15~20ドル(約2200~2900円)で買える素晴らしいワインが数多くあります。高価なワインだけでなく、こうした手頃なワインの魅力も積極的に伝えていくべきです」──そうジーノは結んだ。

forbes.com 原文

翻訳=猪股るー

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