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2025.08.25 08:00

米国株の「AIバブル」はいつまで続くか その特異性と読み解き方

JRdes / Shutterstock.com

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この夏、少し時間をとって、米国の重要な経済学者であるチャールズ・キンドルバーガーの著作を読み直してみた。彼の仕事は、通貨制度と株式市場のバブルという2つの問題と交差していた。どちらも現在、投資家や経済学者の大きな関心を集めているテーマだ(前回のコラムも参照されたい)。

キンドルバーガーの経歴はじつに興味深い。コロンビア大学の博士課程の指導教官は、1913年の連邦準備法の主要な立案者のひとりで、連邦準備制度理事会(FRB)の前身にあたる連邦準備局の初代事務局長を務めたヘンリー・パーカー・ウィリスだった。初期の勤め先のひとつは米財務省で、そこではハリー・デクスター・ホワイトのもとで働いている。ホワイトはよく知られるように、1944年のブレトンウッズ会議で英国代表の経済学者ジョン・メイナード・ケインズと「対決」した人物だ。

こうした背景からキンドルバーガーは、今日の経済世界を形づくった通貨インフラの創設に造詣が深く、自身もその後、第二次世界大戦の米国による欧州復興計画「マーシャル・プラン」の立案者のひとりとして、その形成に関与する機会を得ている。マーシャル・プランは戦後の欧州の成長促進に大きく寄与するとともに、「親切で寛大な世界大国」という米国のイメージを定着させるのに大きな役割を果たした。これに関して、ベン・ステイルの著書『The Marshall Plan: The Dawn of the Cold War(邦訳=マーシャル・プラン─新世界秩序の誕生)』は読む価値がある。

政策に関する業績以外に、キンドルバーガーは著作『Manias, Panics and Crashes: A History of Financial Crises(邦訳=熱狂、恐慌、崩壊─金融危機の歴史)』でもよく知られる。これは、資産バブルがどのように形成され、そして崩壊するかを最も的確に描き出した名著だ。

この本は現在の状況を考えるのにうってつけである。というのも、米国の株式市場は、各種の評価指標、たとえば長期の「シラーPER(CAPEレシオ)」、国内総生産(GDP)と比べる「バフェット指数」、あるいは市場集中度(上位10位の大型株がS&P500種株価指数の構成銘柄の時価総額全体の4割ほどを占めている)によれば、バブル(2000年前後のような)でしかみられない類いの市場行動を示しているからだ。さらに、さまざまな投資家やOpenAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)のような起業家も「バブル」に警告を発している。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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