モビリティ

2025.08.25 09:00

自動運転が生むロボタクシーの将来像 数百兆円市場を巡る現実と課題

Photo by Smith Collection/Gado/Getty Images

自家用車所有のあらゆるニーズを代替できるか

自家用車をほぼ完全に代替する優れたサービスを提供しなければならないが、都市部のロボタクシーはその出発点に過ぎない。スキー旅行などの車を使った旅行、湖にボートを牽引して行くこと、子どものサッカーの送り迎えなど、人が車を所有したいと考えるあらゆる局面に対して顧客を満足させる必要がある。これは極めて難しいため、すべての人を獲得することはできない。そのため、提供できない部分を補うために、低コストや手間の軽減といった特典を用意しなければならない。運転や駐車を自分でしなくてよいこと、ガレージが不要なこと、所有に伴う煩わしさがないこと、オンデマンドでさまざまなタイプの車両にアクセスできることなど、提供できる利点はいくつもある。

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利便性を巡る課題と補完策

オンデマンドの優れたモビリティも提供しなければならない。自家用車は常に即座に利用できる。待ち時間はない(ただし、時には離れた場所に駐車していることはある)。料金が急騰することもない。その排他的なアクセスに対して対価を払っているが、人々は進んでそれを支払っている。また、自家用車に自分の荷物を置いて常に持ち歩けるという利便性に、本当に代わるものはない。ロボタクシーが運用できない場所への解決策も必要になる。たとえば、人間が運転するサービス、自分で運転するレンタカーにスムーズに乗り換えられる場所まで運ぶロボタクシー、あるいは郊外への旅行のために車を届けてくれるカーデリバリーサービスなどだ。

都市と郊外で異なる導入の難易度

優れたモビリティサービスの構築は難しいが、世界の多くの都市では多くの人が自動車の所有をやめている。アメリカのニューヨーク市ですらそうだ。だが郊外のように、各家庭にガレージがあり、あらゆる店舗に無料駐車場があることによって車の所有が極めて容易になっている地域では、それを実現するのははるかに難しい。そうした都市設計の帰結に人々が不満を抱いていたとしても、それを逆転させるには何十年もかかるだろう。モビリティサービスと個人のロボカー所有の争いにおいて、サービス側の最大の武器は価格である。もちろん、企業は車の代替事業と車の販売事業の両方に参加できるため、その争いで「勝つ」必要はない。

自動運転が狙う主要市場の整理

自動運転技術の中核となる市場はおおむね以下の通りであり、市場規模の大きい順に並べると次のようになる。

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・車の代替(サブスクリプション)
・消費者向け車両の機能(最初は高級車、その後標準装備)
・輸送(長距離、中距離、ラストワンマイル、歩道配送)
・特殊車両/公共交通
・配車サービス/タクシー
・オフロード/施設内(農業、産業、採鉱、空港など)

低コスト競争と価格モデルの革新

今日の自家用車所有の総コストは、駐車費を除いても1マイル(約1.6キロ)当たりおよそ60セント(約89円)と見積もられている。ただし、車が古ければはるかに安く、新しく高価な車であればそれより高くなる。ロボカーの所有者が運転や駐車の負担から解放されるにしても、1マイル当たり2〜3ドル(約297円〜446円)の配車サービスでは競争にならない。さらに悪いことに、多くの車の所有者は、自分の車の運用にかかるのは運用コスト(燃料費)のみだと考えており、たとえば電気自動車なら1マイル当たり5セント(約7.4円)未満に見えることもある。これは錯覚だが、そう感じている人は多い。

低価格帯のロボタクシーの「原価」は非常に低く、1マイル(約1.6キロ)当たり20セント(約29.7円)を下回る可能性がある(ただし、研究開発費が下がり、大規模展開が進むまでには時間がかかる)。とはいえ、人々が認識している自家用車のコストに対抗するには、新しく創造的な料金モデルが不可欠だ。少なくともサービスのいくつかに関しては定額制の価格設定が必須になるだろう。

人間には不可能なサービスを可能にする強み

低コストに加えて、新しい市場はロボットと人間の決定的な違いを基盤とする。ロボットは待機を厭わず、24時間365日働くことができる。ロボットが行うことの中には、人間の運転手なら決してやらないことがあり、それが新しいタイプのサービスを始めさせたり、経済的に成り立たせたりする。御者やタクシーのようなサービスは自動車以前から存在したが、新しい収益機会は、従来は不可能だったサービスから生まれる。

当面は小規模市場からの成長に限定

それまでは、ロボカー産業は配車サービスや高級車向けの追加機能やサブスクリプションといった「小さな」市場に限定されるだろう。車の代替は市場によって成功するか失敗するか分からないが、たとえ失敗しても、数兆ドル(数百兆円)規模には至らないまでも稼げる余地は十分にあるだろう。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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