弁護士報酬を分配する――アリゾナ州の特例を利用したダロウの収益モデル
Darrowのビジネスモデルは興味深い。同社は多くのソフトウェア企業と同じように、サブスクリプション費用と従量課金の両方で収益を上げている。しかし、さらに物議を醸す収益源もある。Darrowのアイデアから始まった訴訟で弁護士が勝訴した場合、このスタートアップは弁護士の報酬の一部をひそかに受け取るのだ。その仕組みは、アリゾナ州の弁護士ドン・ビベンズとのほとんど知られていないパートナーシップを通じて可能になっている。2020年にアリゾナ州の最高裁が行政命令で一部の倫理規則を撤廃し、同州の法律事務所が弁護士以外の者と弁護士報酬を分け合うことを認めたことで実現した取り組みだ。
フォーブスの取材に応じた、Darrow顧客の弁護士2人によれば、同社はスタートアップの調査に基づく訴訟では必ずビベンズを共同弁護人に加えるよう求めているという。ビベンズはDarrowの訴訟案件に関する提案を全面的に監督しており、どの法律事務所に持ち込むかを決めるのを手助けし、送付前に案件を精査し、原告を見つけるための広告の運用方法を監督している。
しかし、Darrowの最高収益責任者(CRO)のマシュー・ケシャヴ・ルイスは、この仕組みについて語るのを好まない。フォーブスが繰り返し質問した際も、彼ははぐらかし、「商業契約については開示しない」と述べた。ビベンズは、自身が受け取った弁護士報酬の一部をDarrowに還元していることをフォーブスに認めている(ルイスは補足として、Darrowの提携は法の管轄地域によって異なり、顧客の中にはビベンズと共同弁護を行っていないケースもあると述べたが、それ以上の説明はしなかった)。
ルイスは、自身が及び腰になるのは、競合他社がDarrowのモデルを模倣することへの懸念と、非弁護士との弁護士報酬の分配に関する倫理規定への配慮が理由だと述べている。米国の少なくとも47州では、倫理規定によって非弁護士が弁護士報酬を分け合うことは禁止されている。一方で、一部の弁護士は、そうした規則は時代遅れで保護主義的だという説得力のある主張をしている。
いずれにせよ、ルイスとビベンズはDarrowが不適切なことは何もしていないと強調し、テック企業が弁護士の案件の判断に関与することはないと主張している。彼らによれば、Darrowはあくまで「リーガル・インテリジェンス」として、他のコンサルタントと同様に訴訟を支える情報やデータを提供しているにすぎないという。
急成長するリーガルテック企業
弁護士報酬の分配に反対する人々がこのビジネスモデルをどう見ようとも、社員156人のスタートアップであるDarrowは急速に成長している。アルツィによれば、同社は80の法律事務所を顧客に抱え、年間数万ドルから数百万ドルの範囲で料金を課している。2024年の収益は2600万ドル(約38億円)に達し、今年は5000万ドル(約74億円)を超えると彼は見込む。
「2026年には1億2000万ドル(約176億円)の収益を上げる」と彼は予測し、Darrowのキャッシュフローが2023年から黒字だと付け加えた。「我々は、イスラエルで最大のリーガルテック企業だ。この分野で間違いなく最も収益性が高く、最大の収益を生み出している」とアルツィは述べている。
取材に応じた複数の弁護士は、Darrowの取り組みには大きな可能性があると確信しており、最終的にはAIを使って訴訟の種を見つけるサービスを提供する企業が複数現れると考えている。法律倫理の専門家で法律事務所コーエン・ヴォーンのパートナーであるジェフリー・カニンガムはこう語る。「10年後には、これが当たり前になっていると思う」。
軍歴と司法経験を持つ創業者の背景
イスラエルで育ったアルツィは、軍で4年間勤務する間に少佐にまで昇進し、特殊戦闘部隊の兵士250人を率いていた。その後、ロースクールに進学してイスラエル最高裁判所の書記官となったが、法制度の動きが遅く受動的であることや、訴訟の発端となる仕組みに不満を抱いたという。「制度の認識レイヤーは、人々が持ち込むものに限られていて、本質的に能動的な働きをしていない」と彼は語る。
2020年、彼はイスラエル軍の精鋭情報部隊8200部隊でデータサイエンティストを務め、大量のデータ解析にAIを活用していたギラ・ハヤットと出会った。2人は同年、イスラエルのベンチャーキャピタルF2 Venture Capitalのバラク・ラビノウィッツからシード資金を得てDarrowを共同創業した。ラビノウィッツは現在、Darrow株の10%以上を保有している。


