奇妙な光景だ。サム・アルトマンがAIバブルについて警告する一方で、彼の会社であるOpenAIは評価額5000億ドル(約74兆2500億円)に向けて急成長している。
私たちが伝統的なバブルの領域にいないことを示す明白な証拠を想像することは難しい。
The Vergeの取材に対し、アルトマンは多くの観測筋がすでにバブルを案じていることを認めた。「歴史上のほとんどのバブル、例えばハイテクバブルを見れば、そこには無理のない理由がありました。テクノロジーは本当に重要でしたし、インターネットは非常に大きな出来事でした。人々は過度に興奮したのです。では今、投資家全体はAIに過度に興奮している段階にあるのでしょうか? 私の意見はイエスです」と彼は語った。
しかし、ここでアルトマンのバブル警告は逆説に陥る。投資家の過度な興奮について警告した同じ会話の中で、彼はOpenAIが「そう遠くない将来に、データセンターの構築に数兆ドル(数百兆円)」を費やす見込みであると何気なく述べたのだ。
当然避けられない批判に対する彼の態度はこうだ。「多くの経済学者が頭を抱え、『これは狂気の沙汰だ、無謀すぎる』と嘆くことが予想されます。ですが私たちはただ、『ご心配なく。私たちはやるべきことをやらせてもらいます』と言うだけでしょう」。
これは、持続不可能な予想を心から懸念している人間の言葉ではない。短期的な評価額が過熱気味に見えたとしても、長期的な軌道を明確に見据えている人間の自信の表れだ。
インフラ投資が示すAIの実態
アルトマンの自信を裏付ける数字は驚異的だ。OpenAIは最近、評価額3000億ドル(約44兆5500億円)の資金調達ラウンドで新たに83億ドル(約1兆2300億円)を確保したが、このラウンドは5倍の応募超過となった。従業員の株式売却により、同社の評価額は5000億ドル(約74兆2500億円)に達する可能性があり、史上最も価値のある非公開企業の1つとなる。これらは、生き残りのために奔走するバブル企業の必死の資金調達ではない。大規模な事業拡大を計画する企業による、計算された資金調達なのだ。
こうしたインフラへの巨額投資はOpenAIだけではない。マイクロソフトは今会計年度だけでAIデータセンターに800億ドル(約11兆8800億円)を費やす計画だ。メタはAIとインフラへの投資額が最大720億ドル(約10兆6900億円)になると予測している。これらは投機的な賭けではなく、各社が次世代の基本的なコンピューティングプラットフォームと見なすものへの、計算された投資なのである。
アルトマンが「OpenAIは年末までに100万基をはるかに超えるGPUを稼働させます」とツイートするとき、彼はバブル的な行動を説明しているのではない。すでに実用性を示し、急速に普及しているテクノロジーのための重要なインフラの構築について説明しているのだ。



