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2025.08.23 11:00

アンソロピックが「社会福祉」に進出、ソーシャルワーカーの業務をAIで効率化

Sidney van den Boogaard / Shutterstock.com

幅広い産業に広がるAI活用と雇用への影響

AIはすでに医療や法律からカスタマーサービス、コンピュータサイエンスに至るまで幅広い分野に影響を及ぼし始めている。しかし、アンソロピックが政府の社会福祉に踏み込む姿勢は、同社の適用領域拡大を示している。同時に、AIが労働市場に与える影響についても注目が集まる。アモデイはこの点について、以前から率直に語っていた。彼は今年初め、AIが今後5年以内にホワイトカラーの初級職の半数を消滅させ、失業率を20%にまで押し上げる可能性があると述べた。

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懸念される雇用への影響と人間だからこそ提供できる価値

アンソロピックの大規模言語モデル(LLM)のClaude(クロード)が、将来的にソーシャルワーカーの仕事を奪う可能性について問われると、「AI for Social Good」プログラム責任者を務めるエリザベス・ケリーは「人間的なつながり」の価値を強調した。彼女はフォーブスに対し、「AIは人間の力を発揮させるためのものであることを、明確にすることが重要だ」と語った。彼女は、バイデン政権の元高官で、かつて米国AI安全研究所(US AISI)を率いた経歴を持つ。

ケリーは一方で、Bintiとの提携条件の詳細を明らかにすることは避けた。ただし彼女によると、このプログラムに参加する団体には通常、トークンクレジット(AIの利用権)、マーケティング支援、市場投入戦略の助言へのアクセスが与えられるという。またアンソロピックの技術チームが、プロンプト設計、ファインチューニング(モデルの調整)などを支援する。

大規模慈善団体との連携事例

AI for Social Goodプログラムのもう1つの注目すべき提携事例としては、ビル・ゲイツやチャールズ・コーク、スティーブ・バルマー、インテュイット創業者スコット・クック、ヘッジファンド投資家ジョン・オーバーデックといったビリオネアの慈善財団による社会的投資プラットフォームの「NextLadder Ventures(ネクストラダー・ベンチャーズ)」への支援がある。このプロジェクトは7月に始動し、AIやその他の新技術を活用して低所得層の米国人の支援に注力する組織を後押ししている。

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AI活用に潜むリスクと専門家の懸念

ソーシャルワークにAIを導入する上では注意すべき落とし穴もある。AIは一般的に、答えを持たないときに事実をでっちあげる、いわゆる「ハルシネーション」を起こすことが知られている。また学習データが回答に過度な影響を与える可能性もあり、偏りにつながる危険性がある。Bintiのカーカルーによると、同社はこうしたリスクを軽減するために、今回のケースではアンソロピックのClaudeの「創造性」を抑え、与えられたデータからのみ回答を導くよう調整しており、推測や憶測をしないようにしているという。

懐疑的な専門家もいる。ワシントン大学ソーシャルワーク学部でAIが仕事に与える影響を研究しているクララ・ベリッジ教授は。「これらのツールはもっともらしさに最適化されている。不正確さは消えない既知の問題だ」と指摘する。そして「ソーシャルワーカーが実際にツールから出てくるすべての内容を読み直し、情報が正しいかどうか確認するのであれば、果たしてどれだけの時間が節約できるのか」と疑問を呈した。

現場での反応と導入のハードル

カーカルーによると、ソーシャルワーカーからは、AI機能に関して好意的な反応を受け取っているものの、これまで感じた最大の課題のひとつは、一部ではまだ、AIツールの利用にためらいを示す人がいることだという。家族との面談を録音する許可を求めれば「相手を不快にさせるかもしれない」と考えるケースもあるという。

しかし、カーカルーは、実際に許可を求めてみると大多数の家族は「まったく問題ない」と答えると語る。「こうした機能は事務作業を大幅に効率化し、彼らの本来の仕事に集中できるようにする」と彼女は話した。

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編集=上田裕資

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