大手ゼネコンで巨大建築物の設計業務を担当していた建築士と、商社で成果を上げてきた法人営業マン。2人は安定したキャリアを手放し、社員わずか30人で年商50億円のベンチャー企業、エレビスタへ飛び込んだ。挑むのは、急成長を遂げる再生可能エネルギー事業。その決断の背景と現在地を追う。
2012年創業のエレビスタは、システム開発やWebマーケティングなど多岐にわたる事業を展開してきた。転機が訪れたのは19年。太陽光発電投資売買プラットフォーム「SOLSEL(ソルセル)」を買収し、再エネ事業に本格参入したのだ。22年には売上約35億円を記録し、現在は50億円規模にまで成長を遂げている。
その成長の中核を担うのが、カーボンニュートラル事業を統括する馬橋聖生(以下、馬橋)と、営業チームを率いる曽川拓夢(以下、曽川)。いずれも異業種からの転身組だ。
馬橋は大学・大学院で建築を学び、日本を代表するスーパーゼネコンで超高層ビルの構造設計を担当してきた。順風満帆に見えたキャリアだったが、「このままでは10年後の自分が想像できてしまう」と気づく。経営に近い立場で成長したいと考えていた彼の目に飛び込んだのが、ユニークな制度名が並ぶエレビスタの求人票だった。
「職場にいつもお菓子が用意されている『無限チョコ』や、社員のスキルアップを補助する『二宮金次郎制度』など、ふざけた名前の制度が並んでいるのに、会社は急成長している。そのギャップに興味を引かれました。ここなら自分の強みを発揮し、業績を押し上げる活動ができるかもしれない。そう感じました」(馬橋)
そして、創業者でCEOの石野拓弥との面談が決定打になる。
「圧倒的な熱量と行動力。『面白いことをやって結果を出す』と堂々と言い切る姿に、この人とならワクワクし続けられると確信しました」(馬橋)
一方の曽川は、包装資材や物流機器を扱う商社でBtoB営業を担当し、新人賞受賞を皮切りに安定した成果を上げてきた。しかし、コロナ禍で業界全体のデジタル化やAI、ブロックチェーン導入が加速し、「このまま会社や商材に依存していていいのか」という危機感が募る。知識ばかりを蓄えても行動に移せていない現状に、不安は日に日に膨らんでいった。起業も視野に入れて転職活動を進めるなかで出会ったのが、COO芳川光太郎だった。
「感情に流されがちな自分に対し、芳川さんは論理的に話を整理してくれる人。事業を利益構造から語れ、何より人生も仕事もとにかく楽しそうだった。自分もこんな人になりたいと心から思いました」(曽川)
こうして2人は、2021年12月と2022年1月というわずか1カ月の間にそろってエレビスタにジョインした。
ビジネスの本質を貫く挑戦
入社後、馬橋が任されたのは未経験の営業だった。
「営業経験はゼロ。まずは市場と自社サービスを理解するところから始めました。当然、自分ひとりでは限界があるので、周りの先輩の力を借りながら進めました」(馬橋)
朝は誰よりも早く出社し、夜は最後に退社。休日も数字を伸ばす方法を必死に模索した。その努力はすぐに実を結び、入社からわずか1年半でユニットマネージャーに昇格。就任初年度は前年比170%の成長を達成し、翌年も145%の成長を達成した。
一方の曽川は、BtoC営業の難しさに直面する。
「『SOLSEL』で担当したのは、太陽光発電所を売りたいと考える個人のお客様。前職のBtoBでは、提案内容の根拠を数字で示せば結果につながりましたが、個人のお客様では思いや感情をとらえ、タイミングよく動くことが重要。そこに気づくまで時間がかかりました」(曽川)
さらに子育てとの両立で勤務時間が限られていたため、従来型の“量で勝負する営業”は通用しなかった。そこで営業フローを可視化し、案件特性やメンバーの強みに応じて役割を再定義。結果、商談化率とリードタイムが大幅に改善し、チーム全体の成果を底上げした。
「利益率を意識すると、やるべきことが明確になります。以前は営業を『とにかく足で稼ぐ仕事』と考えていましたが、今は『限られた時間で利益を最大化する仕事』だと捉えています」(曽川)
入社以来一貫して「SOLSEL」事業を担ってきた2人は、「事業ドメインは手段であって目的ではない」と口をそろえる。これは「デジタルで“もっとも”を作り、非合理を解決する。」というエレビスタのビジョンと合致する考え方だ。
「顧客に価値を提供し続け、その結果として利益を生む。それがビジネスの本質だととらえています。上場や世界進出も、結局は利益を出し続けるための手段に過ぎません」(曽川)
「デジタル」×「インフラ」で価値を最大化し、市場に左右されない利益構造を描く。それこそがエレビスタ流であり、2人がこの場所で挑戦を続ける理由なのだ。
サービスへの愛が「勝つ組織」をつくる
エレビスタは「チームの一体感」を重視している。社員数30人で年商50億円を稼ぐことは、全員が利益構造を理解し、経営感覚をもたなければ不可能だ。馬橋は「現場でも、この案件は利益が出るのか、という会話が自然に交わされる。そこが他社との大きな違いだと感じている」と話す。
「入社して驚いたのは、メンバー全員が会社やサービス主体で考えていること。何をするにしても『自分』ではなく『エレビスタ』や『SOLSEL』にとってどうか、という視点をもっている。その背景には、常に組織やプロダクトへの愛があります」(馬橋)
「イベントやチームづくりなど、コア業務以外の価値創出も評価される。それが利益に直結するカルチャーを生み出す源泉になっています」(曽川)
顧客満足度を高めるには、メンバー全員がサービスを愛し、磨き続けることが欠かせない。自らのサービスを愛することは、真摯に顧客に向き合うこととイコールなのだ。
この環境で力を発揮できる人材像ははっきりしている。曽川は「自己成長に貪欲で、利益を生むことを楽しめる人」、馬橋は「がむしゃらに突き進める人と働きたい」と語る。
同社が重視するのは、偶発的な多様性と「方向×高さ(視座)×期間×本気度」の一致。その環境でこそ、がむしゃらに突き進み、突き詰める力をもつ、エレビスタが提唱する“とんがり”人材が輝く。メンバーが挑戦を続け、高いモチベーションを保てるのは、企業自体が挑戦をやめないからだ。安定より成長、現状維持より利益最大化──このカルチャーに共鳴する人が、次の時代のエレビスタを動かしていくのだろう。
まばし・せい◎エレビスタ Business Development Group / Energy Platform Division / SOLSEL Unitマネージャー。大学院修了後、大手ゼネコンに就職し、構造設計を担当。2022年、エレビスタ入社。
そがわ・たくむ◎ エレビスタ Business Development Group / Energy Platform Division / SOLSEL Unitフィールドマネージャー。大学卒業後、包装資材・物流機器の商社で法人営業に従事。2021年、エレビスタ入社。



