破壊工作はロシアのステイトクラフト(国家が政治的・戦略的目標を達成するために対外的に駆使する手段・策略やその活動)の中心的な要素のひとつであり、3年半前にロシアの戦車やミサイルがウクライナを攻撃し始めて以降、ロシアが仕組んだとみられる突発的な破壊行為は欧州各地で多発している。
NATOのマルク・ルッテ事務総長は2024年12月のNATO外相会合で、ロシアは「破壊工作によってわれわれの国々の不安定化と社会の分断を図っている」と断じている。
ロシアの破壊工作への集団的対応を模索するNATO
ルッテは、NATO加盟32カ国の閣僚は「ロシアの敵対的行為やサイバー活動に対抗するための一連の措置で合意した。これには情報交換の強化、演習の増加、重要インフラの防御向上などが含まれる」と説明した。
ロシアによる破壊工作の激化は「ウクライナで続いている戦争の危険がさらに高まっている」ことを反映しているとの認識も示した。
グロスフェルドは、世界最大の核戦力を保有するロシアが、NATO加盟国がウクライナを支援するために直接介入すれば核兵器の使用も辞さないと繰り返し脅していることに言及し、これ自体、ロシアが西側を敵と見なしていること示していると解説する。
現状では、米国が画像撮影や情報収集、核指揮統制など用の高度な衛星群を配備し、軌道上で圧倒的に優位にある。そのため、拡大を続ける米国の衛星コンステレーションはロシアにとって魅力的な攻撃目標になっている。
「第1次宇宙大戦」の前に戦場を均等にする
グロスフェルドは、ロシアは来たる「第1次宇宙大戦」に先立って戦場を均等にするために、核推進宇宙機の自爆による先制破壊攻撃を選ぶ可能性もあるとみる。
ロシアが宇宙での自爆作戦に踏み切れば、高エネルギーの荷電粒子が軌道上を猛スピードで駆け巡り、米国の何千もの衛星が破壊されるおそれがあるとグロスフェルドは語る。ただ、西側諸国の間では、この行動を「軌道上版の真珠湾攻撃」と見なすべきか、迷いが生じるかもしれないという。


