米調査会社ギャラップが最近米国で実施した世論調査で、「飲酒をする」と答えた成人の割合は54%にとどまり、過去最低を記録した。
同社は1939年以降、米国人の飲酒行動の傾向を追跡している。過去の調査でアルコール消費率が最も低かったのは1958年で、55%だった。
この傾向は若年層の間で特に目立っている。35歳以上の米国人の56%が飲酒をすると答えたのに対し、18~34歳では50%弱にとどまった。「1日にグラス1~2杯」という適度な飲酒量であっても「不健康」だと考える国民が半数を超えた(53%)のは調査開始以来初めてで、アルコールに対する一般の認識が大きく変化していることが浮き彫りになった。こうした傾向は、飲酒が健康に及ぼす有害な影響に関する社会の認識が高まっていることを示している。
各種医学団体は、アルコールの有害な影響について警鐘を鳴らしている。例えば、米公衆衛生協会(APHA)は、アルコールには健康上の利点がないと断言している。世界保健機関(WHO)も同様に、摂取量に関わらず、アルコールは健康にとって安全ではないとしている。
アルコールは、さまざまな健康問題を引き起こす可能性がある。例えば乳がんや大腸がん、肝臓がん、口腔がん、食道がんなど、数多くのがんと関連している。長期的には、高血圧や心臓病、肝臓病、免疫力の低下を引き起こし、感染症にかかりやすくなることもある。
健康への懸念の高まりは、アルコールを取り巻く文化にも変化をもたらしているようだ。米国ではこれまでパーティーや結婚式、主要なスポーツイベントなど、祝宴の場とアルコールは文化的に密接に結び付いてきた。だが、国民の過半数が適度な飲酒でさえ不健康だと考えている現代では、人々は健康を優先してノンアルコールの代替品を選び始めるかもしれない。
こうした変化を踏まえると、米公衆衛生局(PHS)のビベク・マーシー前長官が提案したような、アルコール製品に対する警告ラベル義務化への強い支持が得られるかもしれない。マーシー前長官はたばこ製品と同様、アルコール製品にもがんに関する警告ラベルを貼るよう求めており、これが実現すれば、アルコールに対する国民の意識改革が一層進む可能性がある。
他方で、米国ではアルコール消費量が減少傾向にあるにもかかわらず、飲酒する人の割合は依然として54%と過半数を占めている。米国立薬物乱用統計センター(NCDAS)によれば、同国では平均して年間14万人以上の国民がアルコールの影響で死亡しており、12歳以上の米国人の10人に1人がアルコール依存症を患っている。飲酒が及ぼす有害な影響から米国人が健康を維持できるよう、引き続き多くの取り組みが求められている。
今回の世論調査では、飲酒する米国人の割合が史上最低水準となり、適度なアルコール摂取でも有害だという認識が高まっていることが示された。アルコール摂取量が減少すれば、がんや心血管疾患、肝臓病にとどまらず、暴力や交通事故の発生率も低下する。今回の調査結果の傾向が持続すれば、公衆衛生上の利益は計り知れないものになるだろう。



