ブランド初のヘッドホンを発売する理由
Nothingが2021年7月に初めて発表・発売した製品はワイヤレスイヤホンの「ear(1)」だった。以来、ポータブルオーディオ製品をコンスタントに出し続けてきたが、いよいよ初のワイヤレスヘッドホン「Headphone(1)」を投入する。
ユーザーからは長年に渡り「Nothingのヘッドホンがほしい」という要望が寄せられてきたという。しかし「イヤホンができるならば、ヘッドホンも簡単にできるというわけではなく、音響面や人間工学的なアプローチもまったく異なる。設計と試作に長い時間をかけて、ようやくHeadphone(1)にたどり着いた」とペイ氏は振り返る。
特に音質面の完成度を高めるためには、その道のエキスパートの協力を仰ぐことが欠かせなかったという。英国で60年以上の歴史を持つ老舗Hi-FiオーディオブランドであるKEFと共同開発を行った。その成果として「音質はとてもニュートラルでHi-Fi志向。かなり自信を持ってお届けできるサウンドに仕上がった」とペイ氏は胸を張る。
Nothingの真骨頂である個性的なプロダクトデザインの魅力は、Headphone(1)にも存分に活きている。カセットテープを模したような、四角いイヤーカップ側面のデザインはとてもインパクトがある。
実機に触れてみると、本体に搭載するローラー、パドル、ボタンといった直感的に操作できる物理キー(ボタン)の操作性がとてもシンプルで心地よかった。ここはNothingが特に注力したポイントでもあるようだ。
「最近主流のタッチパッドを複数回タップする操作方法は覚えるだけで大変です。あるいは物理ボタンがあっても、すべてが小さく同じ形状では触れた時に区別ができず、誤操作を招きます。Headphone(1)ではこれらのペインポイントをすべて解消したいと考えた」とペイ氏は説明する。
Nothingは2024年4月に発売したEarシリーズのワイヤレスイヤホンで、いち早く音声操作によるChatGPT統合機能を本格的に提供したメーカーだ。ペイ氏は、視覚的インターフェースを持つスマートフォンを「ハブ」とし、高精度な音声入力に対応したイヤホンやヘッドホンといったウェアラブルデバイスを「周辺インターフェース」とすることで、高度なAI連携が実現できると考えている。Headphone(1)にも、NothingやAndroid OSを搭載するスマートフォンとペアリングしてChatGPTにアクセスできる機能がある。今後、この機能をユーザーがどのように活用するのか、発売後の反響が楽しみだ。


