2025年8月25日発売のForbes JAPAN10月号は「30 UNDER 30」特集。30歳未満の次世代をけん引する若い才能に光を当てるアワードで『Forbes JAPAN』では18年より開催し、7年間で総計300人を選出してきた。
今年も4つのカテゴリから30人の受賞者を選出。ENTERTAINMENT&SPORTS部門の受賞者のひとりがバイオリニストのHIMARIだ。
10歳で米カーティス音楽院に進学し、13歳でベルリン・フィルのソリストを務めたHIMARI。勉学の傍ら、世界中を飛び回って観客を沸かせる彼女の次なる挑戦とは。
2025年3月20~22日、ドイツのベルリン・フィルハーモニーは、喝采に包まれた。同所を拠点とする世界最高峰のオーケストラ「ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」の定期演奏会でソリストを務めたのはバイオリニストのHIMARI。13歳のソリストは約100年ぶりの快挙だ。
会場が揺れたのはソリストの若さに驚嘆したからではない。HIMARIが挑んだのは、ヴィエニャフスキのバイオリン協奏曲第1番。技術的に最高難度とされる楽曲を見事に弾き切ったことに、耳の肥えた観客たちは惜しみなく拍手を送ったのだ。
弾き終えたHIMARIは指揮者を見て微笑んだ。その場面をこう振り返る。「最後のパッセージが速くて難しかったんです。そこを終えられたから、うれしくて笑っちゃったのかも。演奏に集中していたから、お客さんの反応は見てなかったです。25分間ずっと没頭していた感じ。あそこに立つことが楽しかった」
母親の影響でバイオリンを始めたのは3歳。早くから頭角を現し注目された。転機は10歳のとき急きょ決まった名門カーティス音楽院の受験。それまで年1~2曲ペースで練習していたが、試験に向け2カ月で7~8曲を覚える必要があった。無理だと思いつつも、「挑戦しないと始まらない」と集中。史上最年少で合格を果たし、アイダ・カヴァフィアンに師事した。
「アイダ先生は優しい顔で、『1週間後にこの曲を』とおそろしい課題を出すんです。ベルリンに向けてヴィエニャフスキ第1番の練習に集中したい時期にも、超絶技巧の『イザイの6番』を出されました。でも、イザイを練習したらなぜかヴィエニャフスキも良くなってきて。先生から『ほらみなさい』と言われました(笑)」
昨年までは「ベルリン・フィルやウィーン・フィルと共演できるバイオリニストになりたい」と目標を語っていた。夢の舞台のひとつを経験した後はどう変わったのか。「2回3回と共演したいし、ほかの素晴らしいオーケストラや演奏家の方とも演奏したいです。そのために勉強しなきゃいけないことはいっぱいありますが、挑戦しないと始まらないですから」
ヒマリ◎2011年、東京都生まれ。3歳でバイオリンを始め、国内外の数々のコンテストで優勝。22年、10歳で米カーティス音楽院に進学。13歳でベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のソリストを務める。25年3月に英国の名門レーベル、デッカ・クラシックスと独占契約した。




