メインMC・髙比良くるまインタビュー
「3003」が始まって1年。30 UNDER 30の受賞者たちと話してきて、あらためて思うのは、本当にいろんな人がいるってこと。
これまで同世代とかかわるなかで、なんとなく「こういう世代だよな」って共通項があった。自分は1994年生まれで、アナログからデジタルへの過渡期に育っている。例えばゲームなら、ゲームボーイ、アドバンス、DS……と、みんなが同じものに触れてきて、「それわかる」って共有できる感覚があった。でも、3003を通してそれが変わった。今の同世代は、あえてくくるなら“めっちゃいろんな人がいる世代”。
アナログとデジタルの境目の時代に育ったからこそ、どっちにでも行ける自由さがある。最新技術をつかう人もいれば、昔のやり方を尊重する人もいる。それが僕らの世代の特徴なんじゃないか。自分の表現を突き詰めるアーティストの春ねむりさんや社会課題の解決を目指す企業を応援するTaliki代表の中村多伽さんなど、いろんな才能の広げ方がある。共通してすごいのは、発想を実現する力。特にびっくりしたのがドキュメンタリーアクターの筒さん。「実在の人物を演じたら面白いのでは」という発想を、本当に実現しているのが面白い。
番組でいろんな人に会ううちに、自分の価値観とは程遠いところにある別の価値観をたくさん知った。今は自分のなかで、それらの新しい価値観たちが輝き出していて。こういうのっていろんな国を旅して、異文化に触れてはじめて味わえる気がするけど、3003ではそれができていて。まるで海外旅行をしてるみたいな気分(笑)。
そんな出演者の皆さんから「話術がすごい」と言ってもらえることもあって、これまで自分が突き詰めてきたことや学生時代にやってきたしょうもないことも、あれはあれで無駄じゃなかったのかも、と思える。だからこそ「これまでやってきた話芸を生かしつつ、まったく違う何かとかけ合わせたら、さらに面白いことができるんじゃないか」って考えるようになった。♯44で生まれた「GALとJAZZ」みたいなことをいつかお客さんの前でやってみたいし、自分がかかわらなくても、出演してくれたみんなが組んだら何が起こるのかも気になる。例えばアニメ作家のしまぐちニケさんとエフェクトアーティストの野島達司さんがタッグを組んだらどんな作品が生まれるんだろう、とか。
「3003」って、そういう“かけ合わせの場”にもなれる気がしていて。誰かと誰かをつなぐことで、まったく別の可能性が立ち上がる。その面白さを、これからも届けていけたらうれしい。
たかひら・くるま◎1994年、東京都生まれ。大学時代の2015年に松井ケムリと結成したお笑いコンビ「令和ロマン(旧・魔人無骨)」のボケ担当。M-1グランプリで23・24年に優勝し、史上初の2連覇を達成。ForbesJAPAN 30 UNDER 30 2024に選出。


