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2025.08.25 09:00

ダンサー、振付師・TAKAHIRO(上野隆博)「スマホの電源を切り、可能性を信じて突き進め」

ダンサー、振付師の上野隆博

マドンナのワールドツアーでの学び

29歳でマドンナのワールドツアーのバックダンサーに選ばれて、歴代世界1位となる興行収入となったヨーロッパツアーに同行しました。ここもまた厳しかったです(笑)。ツアー中はどこにでもトレーニングジムが設営されて、15人ほどのムキムキのダンサーたちがトレーニングをしている。誰よりもマドンナがトレーニングの鬼なんですから! 

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ダンサーたちは当然ながら世界のトップクラスで片手逆立ちの使い手や、高速ウィンドミルの名手など凄い技を持っている。筋肉量も全然違うんですよね。そのなかで僕はパントマイム的な動きを武器にしたオリジナリティを打ち出して、そのセクションを任されるようになりました。このときも自分なりの闘い方みたいなものを、編み出していったのだと思います。

振り付けを始めるきっかけも、マドンナにもらいました。マドンナのアルバムのプロモーションの振り付けと演出を日本でやったらマドンナがそれをすごく喜んでくれて「TAKAHIROは振り付けがいい!」って。じゃあやってみるか、と思ったんです。

日本へ帰国。そして「欅坂46」との出会い

ニューヨークから日本へ活動の場を移すきっかけになったのは2011年3月11日の東日本大震災です。日本にいる家族や友人とこのまま会えなくなったらどうしようと思ったし、自分がアメリカで得た知識や経験を、みんなに見て欲しいと思いました。

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帰国後はダンスのほか振り付けの仕事をオファーされることが多くなりました。なかでも一番大きかったのは「欅坂46」との出会いです。デビュー曲から「サイレントマジョリティ」「不協和音」と続き、これまでに系列グループを含めて150曲くらいを振り付けしています。

欅坂46のダンスはこれまでのアイドルグループのダンスとは異なるものです。行進をしたり、倒れ込んだり、演劇のようなエッセンスが入っています。デビュー前の彼女たちについて、ひとつ言われたことがあります。「この子たちは自分たちの意思で、道を切り開いていく子たちになると思う」と。我々が作ったパッケージをキレイに見せるのではなく、振り付けがベースになって、演者である彼女たちが気持ちを乗せられる、表現の枠を持てるような振り付けにしよう、と思ったのです。

振り付けはただ「右手を上にあげてください」では、できません。単に手を上にあげたものは「現象」であり、ただの「物事」です。そうではなく、悲しいのか、切ないのか、苦しくてもどかしいのか、希望を掴もうとしているのか――演者がその思いを昇華して表現したときに、観客にとって「印象」となる。加えて表現にも余白をできるだけ残すのがいいと思っています。受け手がその印象をどう受け取ってもかまわない。こちらが出すものを自由にキャッチして、それを楽しめるような作品感を意識しています。

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文=中村千晶 写真=品田健人

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