「誇大広告」では済まされない、安全性をめぐる厳しい批判
裁判でテスラの弁護団は、マスクの発言が「誇大広告(puffery)」にすぎず、そもそも真剣に受け取るべきものではないと主張してきた。自動車メーカーが顧客の安全を軽視すれば、巨額の損害賠償、さらに法的制裁に直結する恐れがあり、このような主張はきわめて異例だ。テスラは最近まで大きな法的責任を免れてきたが、テスラの死亡事故データを集計するサイトTesladeaths.comによれば、オートパイロットやFSDに関連した事故でこれまで推定59人が命を落とした。
死亡事故でテスラに33%の責任
マイアミでの裁判で、陪審団は死亡事故の主な責任はドライバーにあると判断したが、オートパイロットの関与を理由にテスラにも33%の責任があると認定した。テスラは控訴したが、この判決は今後も同様の訴訟が相次ぐ可能性を示した。
専門家が指摘するテスラの矛盾した姿勢
「テスラの主張は矛盾している」と語るのは、ジョージ・メイソン大学教授で、AIの専門家として米運輸省道路交通安全局(NHTSA)に自動運転関連の助言を行ったミッシー・カミングスだ。彼女は、マイアミやサンフランシスコでの裁判、さらにカリフォルニア州DMVによる訴訟でも証人やコンサルタントを務めた。
「テスラは、車を販売する際には、『オートパイロットやフルセルフドライビングで走れる』と顧客に訴えておきながら、事故で人が亡くなると『すべては運転手の責任だ。テスラはあくまで運転支援機能としか言っていない』と開き直るのだ」とカミングスは語った。
マイアミでの判決は「この矛盾したやり方に対する明確な拒絶だった」と彼女は言葉を強める。「陪審団は、テスラのテストプログラムに関する証拠を精査し、同社が十分な検証をしてこなかったことが明確だと判断した。自動運転を主張する企業は、それを裏付ける確かなテスト結果を示すことを求められる」とカミングスは述べている。
度重なる打撃で株価が下落
テスラの株価は8月19日に約2.5%下落して321.12ドル(約4万8000円)に沈んだ。同社の株価は、年初から20%下落している。


