暗号資産

2025.08.21 09:30

ステーブルコインは本当に「ステーブル」なのか? その潜在力とリスク

Shutterstock.com

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金融製品や金融戦略はどこかの段階で名前と裏腹の姿をさらけ出すというのは、金融市場の“法則”と言っていいかもしれない。これを「逆ロンシール仮説」とでも呼ぼうか(英ロンシール社の塗料は「缶に書いてあることに偽りなし」という謳い文句で有名だ)。たとえば、教科書的な「無リスク」資産のインフレ下でのパフォーマンスや、「低ボラティリティー」の仕組み商品の劇的なクラッシュを思い出してほしい。あるいは1980年代に米国の貯蓄貸付組合(S&L)が「貯蓄」も「貸付」もまともにできず相次いで破綻した事例なども想起される。

その新たな例に加わりそうなのが「ステーブルコイン」だ。ステーブルコインは急速に成長している資産であり、米国の政府債務、鈍重で保守的な銀行システム、新興国の貧困など多くの問題を解決するものになると見込まれている。

ステーブルコインの仕組みを考えるには、まず金本位制を思い浮かべるといいだろう。そこでは通貨が金(ゴールド)の実物保有で裏づけられていた。その通貨をデジタルコイン(トークン、あるいは「賭けのチップ」的なもの)、裏づけるものを信頼性の高い既存資産(最近は米国債が多い)で置き換えたものがステーブルコインだと大雑把には言える。

その発想は、ステーブルコインは安定した(「ステーブル」な)金融資産に裏づけられているため価値が大きく変動しない、したがって送金や価値の移転の基盤にできる、というものだ。とはいえ、ステーブルコインのなかには、米国債によって完全には裏づけられていないものもあれば、裏づけの資産が暗号「通貨」であるものもあり、とりわけ後者のタイプは明らかに安定性に欠ける。ちなみに「FartCoin」という暗号資産は、本質的には無価値なのになぜか時価総額が14億ドル(約2100億円)もある。笑いのネタという点では価値があるかもしれないが、ともあれこういう暗号資産も存在することを覚えておいてほしい。

過去1年でステーブルコインの利用は急増し、とくに米国債に裏づけられたステーブルコインは顕著に伸びた。ステーブルコインの発行者は現在、米国債を合計で1500億ドル(約22兆円)ほど保有しており、ノルウェーやインド、ブラジルに迫る18番目に大きな米国債保有者になっている。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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