政治

2025.08.21 12:30

ロシア産原油を巡る米国の追加関税、中国とインドの輸入の流れを変えるのか

米国のドナルド・トランプ大統領。2025年8月14日撮影(Andrew Harnik/Getty Images)

米国のドナルド・トランプ大統領。2025年8月14日撮影(Andrew Harnik/Getty Images)

米国ドナルド・トランプ大統領の最大の選挙公約の1つは、ロシアとウクライナ間の戦争を終結させることだった。だが、政権発足から8カ月目に入った今も、両国の戦争は激しさを増すばかりだ。トランプ政権はこの戦いの矛先を、中国とインドにも向けているようだ。

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2022年にロシアがウクライナへの全面侵攻を開始すると、当時の米国ジョー・バイデン政権はロシア産原油に制裁を科した。だが、フィンランドのシンクタンクCREAは、この制裁はほとんど効果がなかったと分析している。なぜなら、ロシアは自国に制裁を科していない中国、インド、トルコ向けに原油を輸出したからだ。さらに皮肉なことに、その原油はトルコのジェイハン港を通して、ロシアに制裁を科している欧州連合(EU)に再輸出された。

戦争に注ぎ込まれる収入を絶つために、ロシアの原油輸出を制限しようとしているのは米国だけではない。主要7カ国(G7)は2022年末、ロシア産原油価格の上限を60ドル(約8840円)に設定した。価格上限の目的について米財務省は、ロシア産原油を市場から排除することなく、ロシアが原油輸出から得られる収入を制限することだと説明した。つまり、石油の供給を維持することで価格の急騰を回避しながら、ロシアの利益を減らすというわけだ。

一方、原油価格の上限設定に対する中国とインドの反応は、ロシアからさらに割引された価格で原油を輸入することだった。米エネルギー研究所(IER)は、両国によるロシアからの原油輸入量が2023年5月に前月比10%増の1億1000万バレルに達し、過去最高を記録したと報告した。中国とインドは石油輸入に大きく依存しているため、市場で安価な石油を購入する機会があれば逃さないだろう。

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米国のバイデン前政権は、両国がロシア産原油を割引価格で輸入し続けるのを阻止するために、あらゆる措置を講じた。インドが石油の代替供給源を探すことを支援する提案も出されたが、こうした試みは結局、実を結ばなかった。

ロシア産原油に対する制裁と価格上限設定は、失敗ではなかった。ただ、これらの措置ではウクライナ侵攻を終結させることができなかっただけだ。

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翻訳・編集=安藤清香

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