経済政策を専門とするベルギーのシンクタンク、ブリューゲルによると、ロシア産原油に対する制裁で戦争の終結には至らなかったものの、ロシアの石油収入が1年で半減するなど、同国の経済に大きな打撃を与えた。この大幅な歳入減により、ロシアでは医療や教育などの予算が削減されたほか、公的年金が凍結され、物価上昇率は12%に跳ね上がった。社会福祉に負担がかかったことで、昨年はロシア全土で市民が抗議の声を上げた。
トランプ大統領の政策
トランプ大統領が今年1月に政権に就くと、就任3日目には石油輸出国機構(OPEC)に原油の増産を要請した。要請の主な目的は、ガソリン価格の引き下げと国内のインフレ抑制だった。二次的な結果として、ロシアに対する圧力が強まった。トランプ大統領は、中国がロシア産原油の輸入を停止しなければ、8月1日以降、中国に100%の関税を課すと警告した。さらに同大統領は自身が創設したSNSのトゥルースソーシャルに、ロシア産原油の輸入を続けるインドに対しても追加関税を課すと投稿。同大統領は6日、インドからの輸入品に25%の追加関税を課す大統領令に署名した。
これが可能になったのは、OPECが9月の原油生産量を日量54万7000バレル引き上げると発表したためだ。これにより、段階的に増産を進めてきたOPECの増産分は当初からの合計で日量220万バレルとなる。これらの措置がどのように展開するのかは無数のシナリオが考えられるが、いずれも米国の消費者にとっては好ましいものではない。
交渉は現在、中国とインドの首脳に石油輸入の流れを変更させようとするトランプ大統領の取り組みが、米国の経済と国民に重大な影響を及ぼす可能性のある段階に入っている。経済の専門家らは、関税が消費者に与える実際の影響について議論するかもしれないが、影響が感じられることは疑いない。問題は、その程度だ。過去数十年間の中東と同様、石油市場は現在、世界で起きている軍事紛争とその将来的な解決において極めて重要な役割を果たしている。


