2016年に第1世代のGoogle Pixelから始まった、グーグル純正のハードウェア「Pixelシリーズ」が間もなく誕生から10周年を迎える。その歩みは当初から最先端のAI技術と共鳴しながら、今日まで独自に進化してきた。そして2025年秋には最新のスマートフォン「Google Pixel 10」シリーズと、スマートウォッチ「Google Pixel Watch 4」など新製品が発売される。
今回、米グーグルでPixelのハードウェア開発を牽引する責任者のピーター・プルナスキー氏と、ライアン・クレムズ氏がインタビューに答えてくれた。Google Pixelが歩んできた軌跡と、生成AIのGeminiがもたらすデバイス体験の革新性、さらにその先に見すえる「アンビエント・インテリジェンス」の展望について深く語ってもらった。
スマートフォンのコモディティ化が進む中、PixelシリーズはAIを核に据えることで他と一線を画しながら独自の存在感を示している。生成AIのGeminiを深く統合した最新のデバイスは、ユーザーの日常にどのような影響を与え、テクノロジーの未来を描き出すのだろうか。
AIとともに歩んだGoogle Pixelの10年間
グーグル純正のハードウェアであるPixelシリーズは、2016年の初代モデル発売から間もなく10周年を迎える。グーグルは日本を重要な市場と位置づけており、IDC Japanの調査によると、2023年には国内市場シェア10.7%を獲得し、前年比527%という高い成長率を達成した。特に小型サイズのPixel 9 Proは日本からのフィードバックを受けて開発された端末だと、Pixelのハードウェア開発責任者であるピーター・プルナスキー氏は認めている。
プルナスキー氏はPixelシリーズの開発を第1世代のモデルから一貫して主導してきた。Pixelの歴史はグーグルがCEOのスンダー・ピチャイ氏が掲げる「AIファースト」の企業戦略と常に連動してきた。現在のグーグルは、ハードウェアとしてのPixel端末、Google検索やGmailなどの独自のソフトウェア、そしてAIエージェントのGeminiという三位一体によるプラットフォームを垂直統合で開発することで独自の強みを築いている。
AI技術の進化に伴い、魅力的なAI体験をスマートフォン上で提供するためには多くの複雑な課題を解決する必要性が見えてきた。このことが、グーグル独自設計のシリコンチップである「Google Tensor」の誕生につながったとプルナスキー氏は説く。
かつてのGoogleアシスタントが、生成AIのGeminiに進化し自然な会話に対応するようになったことで、この統合モデルはさらに深化している。プルナスキー氏はグーグルの強みとして、AI技術をさまざまな方向から拡張できる点に触れ、今年からは動画生成ツール「Veo 3」にGeminiを統合して高品質な動画を作成できるようになったことを例に挙げている。



