単純な保有から利回り追求へ 新たな収益機会
取引やカストディに加えて、ステーキング、レンディング、オプション・オーバーレイといった利回りサービスも有力な収益源となっている。ステーキングは、ユーザーがトークンを預けてブロックチェーンの取引検証を手助けすることで報酬を得る仕組みであり、オプション戦略とは、基礎となる資産配分を変えることなく、ポートフォリオのリスクとリターンのバランスを調整するために金融派生商品を使うものだ。
8.8兆円の資産が直面する「次の一手」という課題
一方、Architect Partnersのチュンによると、資金を調達してバランスシートに暗号資産を積み上げた企業は、「さて次はどうするか」という問いに直面することになる。今や600億ドル(約8.8兆円)を超える暗号資産がリターンを生み出す必要に迫られているが、上場企業自身ではそれをうまく運用できないのが実情だ。
これまで企業は、保有する暗号資産そのものの値上がりに依存してリターンを得てきた。しかし、メルボルンを拠点とする暗号資産レンディング企業Maple Financeのシドニー・パウエルCEOは、暗号資産トレジャリーの急速な拡大が、企業に差別化を迫り、利回りを生む戦略や、低コストの資金を調達してビットコインを買う手法を模索するようプレッシャーになっているとみている。
こうした企業は、競争優位性を築くためにTwo Prime、Maple Financeといった機関投資家向けの貸し手や、Wave Digital Assets、Arca、Galaxyなどの資産運用会社にますます頼る展開も予想される。
暗号資産の運用と投資助言を手がけるBitwiseのシニア投資戦略家フアン・レオンによれば、彼らはトレジャリー管理サービスの手数料として25〜50ベーシスポイントを課している。またGalaxyは今月初め、トレジャリー資産運用事業で1億7500万ドル(約257億円)の資金流入があったと報告した。この背景には、暗号資産をトレジャリーに組み込む約20社の顧客に対し、同社がソリューションを提供したことがある。
ウォール街も資金供給に参入 広がる暗号資産財務の可能性
企業の暗号資産取得の動きは、ウォール街の資金供給によって支えられている。トランプ大統領下の友好的な政策環境や規制の明確化が追い風となり、投資信託大手のキャピタル・グループ、ヘッジファンドのD1キャピタル・パートナーズ、投資銀行キャンター・フィッツジェラルドなどが資金を提供している。
企業の現金4557兆円の一部が暗号資産化する見通し
懐疑論者がいるにもかかわらず、暗号資産トレジャリーブームはまだ始まったばかりだ。「最終的にはすべての企業が、何らかの形で暗号資産トレジャリー企業になると考えている」とBitwiseのレオンは述べている。現在、世界の企業が保有する現金は31兆ドル(約4557兆円)に達しているとされる。「バランスシートの資産の1%であれ10%、あるいは100%であれ、企業は必ず暗号資産を持つことになる。我々にはまだ大きな成長余地がある」とレオンは語った。


