暗号資産の金庫番「カストディアン」の台頭
暗号資産トレジャリーブームのもう1つの受益者が、認可カストディアンである。カストディアンとは、投資家や企業に代わって暗号資産を安全に保管・管理する専門業者を指す。銀行における金庫番のような存在で、取引の裏側で資産の保全を担っている。代表例は、パロアルト拠点の老舗ビットゴーだ。同社のカストディ資産残高は、暗号資産市場の活況と企業トレジャリーの拡大のおかげで2025年前半に1000億ドル(約14.7兆円)を突破した。
企業トレジャリー案件が新規顧客の主要割合に
「企業トレジャリーは、我々のビジネスに占める割合を着実に増している。半年前まではこの分野はあまり目立たなかったが、いまでは新規顧客の相当な割合を占めている」と語るのは、ビットゴーでプライムブローカー業務と米国機関営業を統括するアダム・スポーンだ。彼の推計では、ここ2カ月ほどで20社前後の暗号資産トレジャリー企業がビットゴーとカストディ契約を結んだという。この急増が追い風となり、同社は7月に新規株式公開(IPO)を非公開で申請した。
ビットゴー、コインベースといった大手カストディアンは、機関投資家の暗号資産を保管し、さらにそれを活用して収益を上げられるよう支援する。その対価として、前払い・年次・追加の各種手数料を組み合わせて請求している。FalconXのグローバル市場共同責任者ラヴィ・ドーシによると、最も一般的な手数料体系はカストディ資産残高に応じた年率課金で、通常は0.15〜0.30%程度。ただし大口顧客は10ベーシスポイント(0.10%)まで引き下げ交渉できる。
保管は薄利だが価格上昇で収益循環拡大
こうした手数料収入は、数百億ドル(数兆円)規模のビットコインを管理するカストディアンにとって数億ドル(数百億円)の収益につながる一方で、カストディ案件そのものの利幅はごく薄いのが常だ。だが、こうした代理人(プロキシ)による暗号資産需要は、コインベース、FalconX、Cumberlandといった取引所やプライムブローカーに追加の収益をもたらしている。米国みずほ証券のフィンテック担当シニアアナリスト、ダン・ドレブによると、購入が増えれば価格が上がり、新たな投資家を呼び込み、さらに取引対象のトークンが増えるという循環が生まれることになる。


