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2025.08.25 10:00

雑草抑制を自動化 「アイガモロボ」アジア市場へ|井関農機×NEWGREEN

(写真左から)山中大介・冨安司郎・中村哲也

(写真左から)山中大介・冨安司郎・中村哲也

Forbes JAPANでは2023年から、事業共創に挑むプレイヤーに光を当てる「クロストレプレナーアワード」を開催している。共創により、一社では成しえない価値の創出に挑む──。そんな思いを体現しようとするクロストレプレナーを全国から募り、5つのプロジェクトを表彰した。

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そのなかで、グランプリに輝いたのが「アイガモロボ」だ。水田の水を濁らせ、光合成を妨げることで雑草を抑制し、除草工数を58%削減。日本国内だけでなく海外需要もとらえ、黒字化も見えてきている。

8月25日発売のForbes JAPAN10月号では、5つのプロジェクトを紹介するとともに、事業共創の最新動向を解説している。


2011年3月11日の東日本大震災は、多くの人に生き方を問い直した。日産自動車のエンジニアであった中村哲也もそのひとりだった。震災によって東京でも食料が手に入りにくくなった経験から、中村はプライベートの時間を使って、有事に備えた肥料も農薬も必要としない有機米づくりに挑戦し始めた。

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農薬を使わない米づくりは、除草対策がいちばんの問題となる。そこで中村は、自動で除草できるロボットを考案し、有志メンバーでつくりあげ、農業イベントにも出展するようになった。そんななか、17年にひとつの出会いがあった。山形県鶴岡市で観光や農業、教育などを通して地域づくりを行うSHONAI代表の山中大介だ。山中は、一般的に収獲量が少ないため農業経営には向かないとされる有機農法をこう考える。「化学肥料は日本での産出がほとんどない枯渇資源を使用し、輸入に頼っています。日本の農業を持続可能なものにするには、環境負荷の少ない有機農業の方が、結果的に省エネ、省コストを実現できる」。だから、中村のロボットはひときわ輝いて見えた。

アイガモロボの実機。アイガモを田んぼに放ち、雑草を食べさせることで除草剤を使わない有機農法に由来する。
アイガモロボの実機。アイガモを田んぼに放ち、雑草を食べさせることで除草剤を使わない有機農法に由来する。

そのロボット「アイガモロボ」は、水田の水を撹拌して濁らせ、光を遮ることで雑草の光合成を抑制し成長を妨げると同時に、スクリューで小さな雑草を抜く。除草のタイミングも理にかなっている。雑草は田植えの後に生えてくるため、稲よりも根が張っていない時期に行えば、稲を傷つけることなく安いコストで効果的な除草ができる。除草工数を58%削減し、収量を10%向上させるという。

中村はあるとき、この取り組みを広報部長に紹介する機会があった。すると部長は興味を示し、日産の広報が公式YouTubeで紹介したところ、社外からも注目が集まった。社内で事業化する道も考えたが、事業化の準備に時間がかかり、一年に一度しかない米づくりのタイミングには間に合わない。中村は退職を決意。19年9月に会社を辞め、山中の事業に合流することに決めた。「ロボットをつくって売るだけではビジネスにならない。SHONAIは、幅広い事業を展開する会社であることから、多様な販路や別の収益方法が見込めビジネスになると思った」(中村)

次ページ > アイガモロボを世に出すうえでの、重要な出会い

文=古賀寛明 写真=小田駿一

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