旺盛な海外需要
追い風も吹く。現在、有機農法を行っている圃場は日本の農地全体の1%にも満たないが、政府は「みどりの食料システム戦略」において、50年までに全体の25%、100万ヘクタールまで拡大しようとしている。また、現在加速している除草剤の値上がりや人手不足で農地の大規模化が進めば、除草が最適なタイミングにできない恐れがあるが、アイガモロボを使えば、人手不要だ。そのため、有機ではない大規模農家の購入も増えている。
除草以外でも思わぬ効果をもたらした。ジャンボタニシの活動抑制だ。「ロボットが水を掻くことで水中に酸素を送り込み好気性鉄酸化細菌が増えますが、それによりジャンボタニシの嫌がる二価鉄が増えて食害を抑え、メタンガス発生を抑制できています」と中村は言う。
期待は海外へも広がっている。すでに、東南アジアや北米など7カ国で実証実験を行っており、今後2~3年のうちに本格的なビジネスをスタートさせていく予定だ。中村いわく「海外のほうが需要は旺盛」だという。日本や中国は米を自国で生産して自国で消費するが、東南アジア諸国では米は輸出商品だからだ。「輸出先の国からは必ず、低農薬であることやメタンガスの排出が少ないことなど厳しい条件が課せられます。それらの問題を解決できるのがアイガモロボです」。
山中は今後についてこう語る。「価格は1台25万円ほど。これだけの高機能なので優位性は高いと思いますが、おそらく、後発の中国企業がキャッチアップしてくるでしょう。でも、そのときには日本代表として、アイガモロボがアジアのマーケットを制しているほどの販売スピードでやっていきたい。30年ごろまでに、どれほどのシェアが取れるかが勝負です」。
山中大介◎2008年三井不動産に入社。14年に山形県庄内地方に移住し、街づくり会SHONAIを設立、山形庄内を拠点に、地方の可能性から新たな経済創出に挑む。19年にNEWGREENを設立(写真左)。
冨安司郎◎1980年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。11年、みずほ銀行常務執行役員。16年に井関農機取締役に就任、17年、同社代表取締役副社長、19年から代表取締役社長(同中央)。
中村哲也◎1997年日産自動車に入社。同社在籍中に山梨県で稲作を開始、有志メンバーによる「アイガモロボ」制作プロジェクトを立ち上げる。19年NEWGREENを設立し、アイガモロボを開発(同右)。


