社長を山中、取締役を中村が務め、SHONAIの子会社としてNEWGREENを設立。しかし商品化への道のりは予想以上に厳しかった。「何しろ、SHONAIの100%出資で外部からの資金調達をしていないので、出せるお金には限りがあります。なけなしのお金をつぎこんだ最初の50台も、実は3台ほどしか思ったように動かなかった」と、山中が振り返る。一方で応援者もいた。可能性を評価してくれた電子部品大手のTDKが出資を決断。ロボットの開発をなんとか進めることができた。
そして、アイガモロボを世に出すうえでの、もうひとつの重要な出会いがあった。会社をスタートし、はじめて参加した農業イベントでのこと。中村が偶然、小中学校のときの同級生である川嶋桂と再会。聞けば、井関農機でスマート農業の担当をしているという。「大手の農機具メーカーと組まない限り、ロボットの製品化は難しいという話を山中としていたときでした」と中村は振り返る。一方、井関農機の川嶋もアイガモロボに可能性を感じ、密に連絡を取りながら進化の過程を見続けた。実用性や意義を実感するなか、将来的な連携の必要性があると確信し、それが、21年の資本業務提携につながっていく。
提携の決め手を井関農機社長の冨安司郎はこう話す。「農家を過酷な労働から解放したいという創業の想いのもと、有機農業にはこういう機械が不可欠だと考え、注目しました。環境問題解決も我々の大きなテーマで、いいご縁だと思いました。よくぞ井関を選んでくださったと」
NEWGREENにとっても、この提携が大きな転機となる。この体制がなければアイガモロボは普及できなかったからだ。「農業機械は売ったら終わりではなく、その後のアフターサポートが欠かせません。だから、井関農機のように全国に販売網をもち、顧客との接点をつくれているところと組まないといけない」と山中はいう。
こうしてアイガモロボはNEWGREENが開発・製造し、井関農機が販売・アフターサポートをする体制が整った。現在、生産体制は年間3000~5000台。性能自体もスタート時に比べて格段に進化。販売数を順調に伸ばし、黒字化も見えてきている。


