輸送だけではないネットワークとしての付加価値
デュボアはまだ、価格を明かしていないが、国防総省が数百機単位で運用できる水準に抑えることを目指している。「輸送効率で換算した場合、既存の手段の5分の1から10分の1の低コストになる」と彼は述べている。
Grid Aeroは、多数の機体を同時に飛行させる利点を、単に「撃墜されにくい」という防御面だけでなく、さらに積極的に活用しようとしている。たとえば敵を発見した機体がその情報を共有し、他の機体が回避できるようにしたり、地上との通信が途絶えた機体に、別の機体経由で指示を伝えたりする仕組みだ。デュボアは「これはネットワークだ。だから社名をGrid Aeroにした」と説明する。軍の関係者は、こうした仕組みを監視用途に活用することにも関心を示しているという。
国防総省が絶賛するコンセプトと今後の課題
リフター・ライトはすでに軍からの関心を集めている。元空軍少将でGrid Aeroのアドバイザーのローレンス・マーティンは、「国防総省との会合で、彼らの構想が妥当で優れたものだと評価されなかった例はまだない」と話している。ただし、関係者はその性能や価格が本当に実現可能かどうかを尋ねているという。
一方、デュボアは、国防総省が求める仕様を膨らませてコストを高騰させる傾向に逆らっている。また、Grid Aeroが生き残れるかどうかは、軍の計画立案者の希望をすべて満たせない限られた国防予算の中で、資金を確保できるかどうかにかかっている。太平洋での新たな兵站能力を開発する試みは他にもあったが、中止された例もある。たとえば「リバティ・リフター」と呼ばれる巨大な飛行艇を開発する計画は頓挫した。
リフター・ライトの初飛行は、地上での各種の検証が順調に進めば、年内か来年初めには実施される可能性がある。デュボアと彼のチームは商業貨物市場にも目を向けており、UPSやフェデックスといった大手輸送会社とも意見交換をしている。
しかし、現時点での焦点は、太平洋での戦争の可能性に備え、米軍の補給の仕組みを万全なものにすることだとデュボアは強調する。「数多くの人々が警鐘を鳴らしている。今こそ具体的な行動を起こす時だと思っている」と彼は語った。


