収益を支える中国市場とAI事業
グローバル化を進める一方で、バイトダンスの収益の中心は中国にあることに変わりはない。AI事業でも中国は主要市場だ。「中国版のChatGPT」と呼ばれる同社の「豆包(Doubao)」は昨年、中国で最も人気のあるチャットボットとなっていた(復旦大学の研究評価によれば、Doubaoは、他の中国のチャットボットよりも国家の検閲指令に従いやすかったという)。
バイトダンスはまた、中国の子会社を通じて「chinese.ai」というドメインを4年前から保有しており、このことは、同社がAI分野でさらなる野心を持っていることを示している(ただし、このサイトはまだ稼働していない模様だ)。
子ども向け教育アプリ事業への継続的な関心
バイトダンスは子ども向けアプリの開発にも一貫した関心を示している。同社の宿題を手助けするアプリ「Gauth」は、トランプによる猶予措置のおかげで米国で引き続き利用可能だが、同社は他にも子ども向けプロダクトを試してきた。米議会がTikTokの禁止を検討していた数年間、バイトダンスは子ども向けの英語学習アプリ「Rex and Friends」を運営していた。また同社は、byteprek.comやkids.app、aikids.appなど子ども向けサービスを連想させるドメインも登録していたが、実際に開発は行われなかった模様だ。
ニュース分野への再参入を示唆するドメイン登録
ドメインの登録記録からはバイトダンスがニュースアプリへの再参入を検討していることが見て取れる。同社は以前、英語圏向けニュースアプリの「TopBuzz」と「News Republic」を運営していたが、TikTokが台頭するにつれてこれらは終了した。しかし、2024年には子会社のSpring SG Pte. Ltd.(現在はバイトダンスのAIアシスタントアプリのCiciなどを配信)が、buzzbriefnews.comやcubenewsai.com、linkernewai.comなどの複数のニュース関連ドメインを登録した。
フォーブスは、これらのアプリやドメインに関してバイトダンスにコメントを求めたが、回答は得られなかった。
不執行命令の期限切れが迫る中の米国市場での展望
トランプ氏による執行停止命令のおかげで、TikTokとバイトダンスは米国での事業を継続できてきた。しかし、その3回目となる命令が、あと1カ月足らずで期限切れを迎えようとしている。この命令をめぐる議論はTikTokに特に集中しているが、この法律はバイトダンスのすべてのアプリに適用される。同社のアプリは現在、数百万台の米国のデバイス上で利用されており、動画編集の「CapCut」から学習支援の「Gauth」、開発者のコンピューター上で自律的にコードを実行するエージェント「TARS」に至るまで、多岐にわたる機能を提供している。
バイトダンス売却交渉がTikTok以外のアプリにも及ぶ可能性
米国においては、バイトダンスは事実上TikTokと同義になっているが、世界では、TikTokは同社の数ある大ヒット製品のひとつにすぎない。トランプは、バイトダンスがTikTok米国事業の少なくとも一部を米国の投資家のコンソーシアムに売却する取引を仲介する意向を示している。TikTokの関係者の1人は最近フォーブスに対し、そのような取引が行われる場合は、TikTokのみにとどまらず、他のバイトダンスのアプリが含まれる可能性が高いと語った。
米議会による「売却か禁止か」の法律は、TikTokを超えた問題だ。この法律の行方は、世界最大級のテック大手、バイトダンスの米国における今後数年間の命運を左右することになる。


