北米

2025.08.20 13:00

トランプめぐるTikTok騒動の陰でAI事業拡大、バイトダンスのアプリ戦略

Below the Sky / Shutterstock.com

Below the Sky / Shutterstock.com

米国の議員の大半は2024年、中国のテック大手バイトダンス(ByteDance)を国家安全保障上の脅威とみなし、同社のアプリを禁止した。しかし今、トランプ大統領による猶予措置の下で、同社は新たなアプリを米国で展開し始めている。

バイトダンスが米国で新アプリを展開できる背景

2024年、米議会はTikTokとその中国の親会社バイトダンスが所有するすべてのアプリの売却を求め、それに応じない場合は米国での配信を禁止するという法律を可決した。この法律は、2020年にトランプ大統領が、そして2023年にバイデン大統領が行った脅しを実行に移すものだった。

しかし、トランプは今年初め、司法省にこの法律を執行しないよう命じた。これによりTikTokは法律が定めた1月の期限を過ぎても配信を継続できることとなったが、この措置は単にTikTokを救う以上の恩恵をバイトダンスにもたらした。同社は、米国に限らず世界各地の市場で新たなプロダクトを投入し続けることが可能になったのだ。

新たに投入されたAI関連ツールとその特徴

こうした新製品の多くは人工知能(AI)の新たな用途を打ち出している。中国市場向けの新アプリに加え、バイトダンスは英語圏向けにAIコーディングアシスタントの「Trae」やAI画像生成ツールの「Dreamina」、AIレプリカと呼ばれるアバターを作る「PicPic」、音楽ライセンスプラットフォームの「EasyOde」、さらにオープンソースのAIエージェント「Agent TARS」を投入した。これらのプロダクトは、以前に発表したホスティング基盤ツールの「Katalyst」や「KubeAdmiral」、AI音楽生成ツールの「Mawf」と「Ripple」に続くものだ。

バイトダンスは、しばしばシンガポール拠点の子会社を通じて開発中のアプリを公開しており、これらの製品の中には同社とのつながりを明らかにしていないものも存在する。

米中間のAI覇権争いにおける立ち位置

同社が矢継ぎ早に新製品を送り出すのは、部分的には競合に肩を並べるための動きと見られている。例えばTraeはマイクロソフトの「VS Code」に似た機能を持ち、DreaminaはMidjourneyやGoogle Veoの競合に位置づけられる。一方で、これらの新アプリは、AIの覇権をめぐる米中の地政学的な争いにおいて、バイトダンスが今後も中心的な役割を果たし続けることを明確にしている。

TikTokと中国との関係を切り離す戦略

TikTokの人気が爆発的に拡大する中で、バイトダンスは自社のアプリを中国との関係から切り離そうと努めてきた。しかしその裏で、同社は、中国国営メディアとのつながりを持つ人々を数百人規模で雇用しており、その中にはTikTokで働いた経験を持つ者もいる。一方で、同社は以前から自らを「中国企業ではなくグローバルに生まれた存在」と称しており、その言葉を裏付けるように、近年は創業者の張一鳴を含む多くの幹部がシンガポールに拠点を移している。

次ページ > 収益を支える中国市場とAI事業

編集=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事