目をつけたのは、生ごみになっていた果物や野菜の残渣だ。残渣の焼却処分は、気候変動を悪化させる要因のひとつ。これらを燃やさずに活用できれば一石二鳥だ。
「オレンジ、バナナ、パイナップル。サトウキビ……。いろんな残渣を土に埋めて、比較的早く育つトマトやオクラで繰り返し実験しました。1000回以上試すなかで見えてきたのは、ペクチンを含む作物の組み合わせが良いということ。サンプルを父の麦畑に混ぜたら、普通は6回の灌漑をするところ2回で済みました」
大学進学後、製品化のために起業。教授を口説き落として、昼は科学的な証明を得るための実験、夜はジューススタンドを回って果物の皮を集め、乾燥させて製品にする実験を繰り返した。
実はペクチンの吸水性は研究者の間で知られていた。にもかかわらず大手素材メーカーが手を出さないのはなぜか。ナラヤンは「バウンダリー(境界)があるからだ」と分析する。
「抽出されたペクチンは高価なので、原材料として最初から検討されないのでしょう。私たちはコストに見合うように残渣から製品化する技術を磨いたのです」
EFポリマーは19年に沖縄科学技術大学院大学に採択され、拠点を沖縄に移した。それまでは一部に化学薬品を使っていたが、研究を進めて100%オーガニック化に成功。21年に量産に踏み切り、製造量は一昨年70トン、昨年400トンと拡大。インドや日本、さらにフランスやタイ、アメリカでも展開を始め、現在は世界で3万を超える農家に使用されている。
気候変動は一企業の力では解決しがたい大きな問題である。しかしナラヤンは力強くこう語る。
「若い世代のエネルギーは世界を変えるポテンシャルがあります。そう信じて行動すれば、次の世代も背中を追ってくれるはず。まずは自分たちがアクションすることが大切です」
ナラヤン・ラル・ガルジャール◎1998年生まれ。高校生時代に農家である父親が水不足に悩む姿を見て、技術のコンセプトを考案。インドの農業大学在学中の20歳のときに起業。2019年に沖縄科学技術大学院大学(OIST)のアクセラレーターへの採択をきっかけに来日。その後沖縄本社を設立。25年4月、10億円の資金調達を実施。
シャツ\59400円、パンツ\41800円/ともにカイキ(エスティーム プレスTel:03-5428-0928)、その他スタイリスト私物


