2025年8月25日発売のForbes JAPAN10月号は「30 UNDER 30」特集。30歳未満の次世代をけん引する若い才能に光を当てるアワードで『Forbes JAPAN』では18年より開催し、7年間で総計300人を選出してきた。
今年も4つのカテゴリから30人の受賞者を選出。ENTERTAINMENT&SPORTS部門の受賞者のひとりが落語家の桂枝之進だ。
全国の落語会に出演する傍ら、同世代のクリエイターと「Z落語」を創設し、落語とクラブカルチャーをMIXしたイベントやAIによる新作落語の創作プロジェクトなどを実施する彼は、どんな人物なのか。
2025年1月、舞台上一面に大型スクリーンを設置した落語公演「落雷」が渋谷で開催された。企画したのは24歳の落語家、桂枝之進。彼が演じた「百年目」では、主人公が遊びほうけて浮つくシーンでスクリーンに桜の花びらが派手に舞った。落語家の話芸と映像を同時に観ることで、没入感のある一席となった。物語の情緒を「直感」で楽しませる、新たな落語の誕生だ。
神戸市に生まれた枝之進、5歳のときに近所の落語会で落語に出合い、9歳で「速記本」を手にしてからは友人の前で演じるように。中学時代にはアマチュアながら全国で年間150もの舞台に上り、15歳で桂枝三郎門下へ飛び込んだ。ただ、落語の観客は年齢層が高い。「30年後、僕の落語は誰が聞いてくれるんや」という不安から、20年8月に落語のミクスチャーを実践するコレクティブ「Z落語」を創設。
「江戸時代の寄席は町の人々の交流の場。現代のクラブと同じでは」という発想で、クラブでDJと落語の両方を楽しめるイベント「YOSE」を実施した。「YOSEで初めて落語に触れた若い人も多かったのですが、きちんと伝わって笑いが起きた。これがうれしくて、どんな世代の人も楽しませられる落語家という仕事の意義を感じた瞬間でした」
来年には「落雷」の海外公演も計画中。これを皮切りに世界にも挑戦する。「物語を通じて落語家と観客とがつながる、あの一体感を海外の人とも生み出してみたい。どこかで心が通じる瞬間が、きっとあるはず」。世代も言語をも超えて人を楽しませる、落語界の革命児だ。
かつら・えだのしん◎2001年生まれ。17年に六代文枝一門三代目桂枝三郎に入門。全国の落語会に出演する傍ら、20年に同世代のクリエイターと「Z落語」を創設。落語とクラブカルチャーをMIXしたイベントやAIによる新作落語の創作プロジェクトなどを実施。




