なぜ孤独は寿命を縮めるのだろう?
孤独な心は、体にどう影響するのだろう?
その答えは、ストレスと他者からのサポートに対する「身体の反応」にある。
ストレスは「寿命」を縮める
人間は脅威を感じると、「闘争・逃走反応」と呼ばれる急激な生理的反応を示す。これは「闘うか、逃げるか」の戦略を表す用語だが、正確には、「闘争・逃走・凍結」反応と呼ばれるべきだ。
なぜなら人間を含む多くの動物は、危機に瀕すると動けなくなることがあるからだ。
「身がすくむような恐怖」は、この状態を指す言い回しだ。
脅威を前にすると、血圧と心拍数、呼吸数の上昇、発汗の促進、そのほかの生理的変化──暗闇で状況を把握するための瞳孔の拡大など──が起こる。
この反応は「自律神経系」の一種である、「交感神経系」の働きによるものだ。自律神経系とはその名が示す通り、意識的な努力なしに働き、自律的に機能するシステムである。
交感神経のこうした突発的な変化は、脅威に対処するために、体をすばやく適応させ、態勢を整え、エネルギーを蓄えるのに役立つ。
だが、闘争・逃走反応には問題がある。危機が過ぎ去った後や、誤警報だった場合に、すぐにはリラックスした状態に戻れないのだ。
最も一般的な精神障害である「不安」に悩む人は、闘争・逃走反応が過敏になっている。
不安には、具体的な原因によって引き起こされる恐怖症もあるが、一般に不安といえば、明白な危険がないのに不安を感じ続ける、「全般性不安障害」のことだ。これが最も多いタイプの不安障害である。
この障害を持つ人は、激しい恐怖感や過呼吸を伴う「パニック発作」に襲われることもある。
全般性不安障害の次に多いのが、「社会不安障害」(社会恐怖症やあがり症とも呼ばれる)だ。スピーチ恐怖症もこの一種である。社会不安障害はその名が示すように、人前で不安を感じることをいう。


