創業2年で受注147億円超、狙うは巨大な防衛宇宙市場
世界の人工衛星メーカーの売上高は昨年、200億ドル(約2.9兆円。1ドル=147円換算)に達したと、衛星産業協会(Satellite Industry Association)は推計している。Apexは、米軍が宇宙での活動を拡大するなかで、この成長する市場において、大きなシェアを獲得することを狙っている。議会予算局(CBO)によれば、ゴールデンドーム計画だけでも、コストが総額8000億ドル(約117.6兆円)を超える可能性がある。
しかし、Apexにはまだ課題が多い。2024年に生産した人工衛星はわずか3基で、今年の目標は10基だ。
それでも同社の売上は、好調な販売によって昨年6000万ドル(約88億円)に達したとフォーブスは推定している。その大半は、納入前の支払いによるものだ。対象は、最大約150キロのペイロードを搭載可能な「アリーズ」のバスや、その倍のペイロードを運べる「ノヴァ」である。現在は約450キロの積載能力を持つ「コメット」の開発も進んでいる(「ノヴァ」の名は、ベナッシが飼っているバーナードゥードルにちなんでおり、「コメット」はかつてApexの初期の社員が飼おうとした犬に由来しているそうだ)。
シナモンによれば、受注元は約12社あり、その3分の2を防衛分野が占める。受注総額は1億ドル(約147億円)を超えているという。Apexは政府の制約を理由に顧客の詳細や提供内容について多くを語ろうとしないが、顧客には英航空宇宙大手のBAE、防衛テックのスタートアップAndurilが含まれていると明かした。Andurilは宇宙事業への進出に向けて少なくとも1基の人工衛星を、Apexに発注した。
一方、商業顧客のひとつが、宇宙で太陽光を集める人工衛星ネットワークの構築を計画するAetherfluxで、Apexはその初号機となるデモ衛星用バスを間もなく納入する予定だ。Aetherflux創業者であり、ロビンフッド共同創業者として知られるビリオネアのバイジュ・バットは、Apexに強く感銘を受けて投資家にもなった。彼はフォーブスとのインタビューでベナッシの技術力とシナモンの推進力を称賛し、「彼らは勤勉でしたたかだ」と語った。
シナモンによればApexの人工衛星の需要は非常に高く、現状で2028年に年間144基の生産体制に到達する計画を加速させる方法を模索している。同社は、4月に自社部品の製造能力の拡大に向けて2億ドル(約294億円)を調達したが、これにより借り入れを合わせた調達総額は3億2200万ドル(約473億円)となった。
Apexの出資者には、8VC、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)、シールド・キャピタル、ポイント72ベンチャーズ、XYZキャピタルといったベンチャーキャピタル(VC)が名を連ねる。同社の急速な成長は、フォーブスが毎年、25社のユニコーン候補を選出する「ネクスト・ビリオンダラー・スタートアップ」のリスト入りにもつながった。
低軌道での商業活動は近年爆発的に拡大しているが、Apexは、この分野で最大の市場である通信分野では伸びしろが限られるかもしれない。宇宙からブロードバンドを提供する世界最大のコンステレーションを構築中のSpaceXやアマゾンは、自社で宇宙船を製造しているからだ。
Apexにとって、最大のビジネスチャンスは防衛分野にある。米国防総省は、人工衛星サプライヤーの裾野を広げたいと考えており、Apexの実績はこれまでのところ非常に優れていると、米宇宙軍のある将校は匿名を条件にフォーブスに語った。「国防総省は、巨額の資金を投じても、能力が期限内に、あるいは期待どおりに提供されないことにうんざりしている」とこの将校は語った。
Apexはこれまで、国防総省が新規企業を試すために用いる小規模な研究開発契約を1つずつ成功させてきた。そして今年2月には、宇宙軍に数量が非公開の「アリーズ」衛星を納入するための4600万ドル(約68億円)の契約を獲得した(競合のYork Space Systemsは、Apexが適切な競争を経ずにこの契約を獲得したとして訴訟を起こしている)。
シナモンのオフィスには、宇宙服を着た愛犬アリーズの絵が飾られている。机に座ったシナモンは、これまで自社で衛星バスを製造してきた企業の一部を説得し、Apexの製品を試すよう働きかけたと語った。彼はさらに多くの企業を取り込もうと目論んでいる。「私の夢は、ゴールデンドームで競う主要な防衛請負企業が、すべてApexの衛星バスを使うようにすることだ」。
人工衛星業界の覇権を握ろうという同社の野望は、会議室のそれぞれに、ワニの一種のカイマン、シャチ、タカといった「頂点捕食者(apex predator)」の名を冠していることからも明らかだ。そしてシナモンの執務室の前には、最も恐ろしい捕食者である人間(ヒューマン)の名が掲げられている。


