米国では新車の価格が天井知らずの急上昇を続けている。自動車価格情報のKelley Blue Bookによると、新車のメーカー希望小売価格(MSRP)の平均は現在5万1000ドル(約753万円)を超えている。過去1年間で2.3%も上昇し、2020年の平均価格と比べると1万ドル(約148万円)以上も高くなっている。さらにトランプ大統領が、米国に輸入される自動車や部品、鉄鋼に課した関税の影響から、新車の価格が今後どのくらい上昇するか、依然として見通せない状況だ。
現在の新車価格の高騰は、インフレーションや市場状況の変化に加え、自動車に求められる装備が数年前とは大きく変わっていることにも原因がある。「経済的な大衆車」が、手動式ドアロック、手動巻き上げウインドウ、AM/FMラジオのみを装備した車を指す時代は、ずっと前に過ぎ去った。現在はそのような簡素な装備の車を販売店で探すことは難しい。どの車も、最近まで高級車に限られていた装備が標準で搭載されており、これが価格を押し上げる一因となっている。
米国市場から三菱ミラージュとキア・リオが撤退したため、2万ドル(約295万円)以下の価格が付けられた新車は、1車種だけになってしまった。1万7190ドル(約253万円)の日産ヴァーサだ。しかし、マニュアル・トランスミッションの一番安価な仕様を、販売店にある在庫の中から見つけようとしたら苦労するだろう。なお、オートマチック・トランスミッションは1万8990ドル(約280万円)からと、それでも2万ドル以内に収まっている。
さらに、自動車売買プラットフォームのCars Commerceによると、価格が3万ドル(約442万円)以下の新車が市場で占める割合は、新型コロナウイルス流行前の2019年には38%だったが、現在は13.6%に減少しているという。また、最も安い価格帯で販売されている新車の92%が輸入車であるため、関税の影響が本格化した経済の下では、3万ドル以下の車種はさらに減るだろう。



