マーケティング

2025.08.21 14:15

メキシコ湾をめぐる問題に一矢。テカテビールの「The Gulf of Mexico Bar」

ゴールド以上の受賞チームは登壇。中南米は、国旗持参のケースも。(筆者撮影)

この事例は、アウトドア部門ゴールド他を受賞した。カンヌライオンズでは、月曜~金曜の毎日、19時~21時に贈賞式が行われ、ゴールド以上の事例が紹介され、受賞チームが登壇してライオンのトロフィーを渡されるのだが、この事例は他のどの事例よりも、観客席からの拍手や歓声が多かった。世界各国から集まって来た業界関係者の中にも、快哉を叫ぶ人が目立って多くいたのだ。

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では、快哉を叫ばれたこの事例で、テカテビールは何をしたのか? 現在アメリカ湾と呼ばれている洋上に船を出し、そこにThe Gulf of Mexico(メキシコ湾)という名のバーを開店したのだ。そして、バーの開店をグーグルマップに申請した。グーグルマップでは、店の営業を申請すると半自動的にマップ上に名前が掲載されるようになっていて、アメリカ湾(The Gulf of America)の表示のすぐそばに、メキシコ湾(The Gulf of Mexico)の名前が堂々と表示されることとなった。

メキシコの人々は、テカテビールを飲みながら、大喜びをした。ところが、混乱を招くという理由からか、グーグルマップ上からThe Gulf of Mexicoという表示(Pin)は削除されてしまう。それでも、テカテビールはめげない。またすぐにThe Gulf of Mexico Bar営業の申請をグーグルマップに行い、結果として表示され、また削除され、また申請して表示されを繰り返した。

もちろんこの事例で、何かが解決されたわけではない。しかし、現在の世界情勢で言えば、メキシコの人々にとっては暴挙とも感じられるであろう、トランプ大統領のこの行為に対して、撤回させることはもちろん、正面から異を唱えることさえ難しい。そうした“難題”に対して、少なくても“一矢”を報いることは出来た。その“広告的機知”に対してメキシコの人々は喝采を送り、テカテビールへの好意度も大きく上がったと言う。

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正攻法では解決の難しい“難題”は、どこにでも少なからず存在しているのではないだろうか? そんな時、“機知”を働かせてみるのも手かもしれない。

文=佐藤達郎

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