動物に囲まれた幼少期が育んだ予防医学への情熱
2022年、フォーブスの「30 Under 30」サイエンス部門の入賞者であるハリオウアは、テキサス州オースティンで育った。彼女の母親は栄養学の博士号を持つモロッコからの移民、父親は大工として働くドイツからの移民で、その当時はヒッピーで知られていたオースティンに定住した。ハリオウアは、10匹以上の猫、複数の犬、その他保護された動物に囲まれて育った。「私たちは、いつも子猫、野生のリス、オポッサムの赤ちゃん、カメ、翼を痛めた鳥を世話していた」と彼女は語る。
テキサス大学オースティン校に進学したハリオウアは、当初は美術専攻だったが、すぐに本当の情熱が科学にあると気づいた。彼女はその後、研究室で長い時間を過ごし、サンディエゴのサンフォード再生医療コンソーシアムで神経疾患の研究に取り組んだ2度の夏の経験によって、予防医療と長寿薬への関心を深めていった。
「私は、患者が重篤な末期疾患と診断されてから初めて介入し、助けようとする医療分野のスタンスがどうにも納得できなかった」と彼女は語る。「自動車だって、高速道路でエンジンから煙を吹き始めるまで整備を待つことはない。時間をかけて定期的にメンテナンスをするものだ。なぜ人間の体でも同じことをしないのだろうと考えていた」。
誰もがそんなことは不可能だと言ったが、私は可能だと言い続けた
2018年1月、オックスフォード大学で遺伝子治療の医療経済学をテーマに博士課程を進めていたハリオウアは、サンフランシスコ拠点のVCのLongevity Fundに参加。1つの遺伝的変化が線虫の寿命を延ばすことを示す初期研究に出会い、衝撃を受けた(翌2019年にオックスフォードを中退した)。
その後、彼女はピュリナ研究所によるラブラドール・レトリバーを対象にした14年間のカロリー制限研究のレポートを読み、餌の量を25%減らすことで寿命がほぼ2年延びることを知った。現在、ハリオウアの腕には、ラブラドールの頭、マウスの顔、そして線虫のくねった体を描いた独特のタトゥーがある。これは、これまで行われた最も成功した3つの寿命の延長研究を組み合わせたタトゥーだ。
「この生物学的知見は何十年も前から存在していた。私はそれに極めて強く惹かれ、半ば取りつかれたほどだったが、これまで実際の薬にした人はいなかった」と彼女は語る。
2019年、ハリオウアは同じ志を持つ協力者を見つけた。それは、現在はBoxGroupのパートナーを務める投資家、グレッグ・ローゼンだ。当時彼は、韓国で見た研究に基づき、犬のクローン事業を立ち上げることを考えていた。サンフランシスコのフォルサム通りにあるフィルズ・コーヒーで、ハリオウアは当時考えていた動物の長寿薬に関するアイデアを彼に持ちかけた。
「彼女は『犬のクローンについて何も知らないけれど、私の研究はすべて長寿に関するものだ。犬の長寿ビジネスはどう?』と言ったんだ」。ローゼンはそう振り返った。「それからの6カ月間、私たちは一緒に事業計画を練り上げた。技術的な実現可能性、資金調達についての検討を進めた」。
2020年1月、Loyalは450万ドル(約7億円)のシード資金を調達し、「世界初の寿命延長薬を開発する」という、ただ1つの目標を掲げて事業を立ち上げた。
「誰もがそんなことは不可能だと言ったが、私は可能だと言い続けた」とハリオウアは語る。


