潜在市場は米国の9000万匹、いずれは人間にも
Loyalはまだ売上を得ていないものの、ハリオウアはFDAと協議を進め、初期のハードルを乗り越えている。同局の革新的な動物用医薬品に対する条件付き承認制度のもとで、彼女は来年、Loyal初の薬を市場に投入する承認を得たいと考えている。
犬の寿命は低カロリー食で延ばせることが実証済みで、同社の薬は、10歳以上の高齢犬の代謝を低カロリー食を摂った状態に変化させる効果を持っている。またLoyalは、小型犬に比べて大型犬に多く存在する成長ホルモンを抑制することで寿命を延ばすための注射薬と錠剤の開発も進めている。
ハリオウアはこれまで、1億3500万ドル(約198億円)の資金をベインキャピタル、ファーストラウンド、コースラ・ベンチャーズ、ヴァロー・エクイティ・パートナーズといった有力VCからエクイティ(株式)で調達している。また、追加で2000万ドル(約29億円)の借り入れも実施した。Loyalの評価額は4億2500万ドル(約625億円)で、同社がターゲットとする市場は巨大だ。米国では約6000万世帯で約9000万匹の犬が飼われていると、米国獣医師会は報告している。
昨年の犬への世帯あたり支出は平均1852ドル(約27万円)で、2023年から6%増加した。Loyalの薬は、FDAからの承認が得られれば、短期間で数億ドル(数百億円)規模の収益を生み出す可能性がある。
こうした理由で、Loyalはフォーブスが毎年、次のユニコーン候補の25社を選出するリストの「ネクストビリオンダラー・スタートアップ」最新版に選出された。今年のリストは、人工知能(AI)関連企業が多くを占めたものの、Loyalの存在は、成功するスタートアップが必ずしもAI企業である必要がないことを示している。
「世の中には、挑戦せずにはいられないほど重要なことが存在する。Loyalの取り組みは、まさにその1つであり、これまでのところ極めて順調に成果を上げているようだ」とVC投資家のヴィノッド・コースラは述べている。彼のファンドは少なくとも10の長寿関連スタートアップに投資しており、彼自身も、体重が68キロにも達することもある大型犬のニューファンドランドを飼っている。
Loyalの当面の市場は犬向けだが、ハリオウアは、その成果を人間向けという大きな市場での成功につなげることを期待している。しかし、それは途方もない挑戦だ。例えば犬の長寿薬を承認まで持っていくには、2500万ドル(約37億円)のコストと5年の期間が必要だ。人間向けの薬の場合は、最低でも10億ドル(約1470億円)に加えて、10年以上の年月が必要となる。しかも人間の長寿向け業界には、怪しげな業者、効果の証明されていないサプリメント、怪しいクリニックが多いことで知られている。
「人々は、長寿薬と聞くと、いかがわしい薬、永遠に生きようとするビリオネア、大げさな主張を思い浮かべがちだ。しかし、Loyalの取り組みはそれとは異なる、精緻で現実的なものだ」と語るハリオウアは、最終的には科学が勝つと考えている。「獣医に行けば、犬の寿命を延ばす薬が手に入れられると知ったら、一般の人々はきっと驚くはずだ。そして、同じことがなぜ私の祖父母にできないんだと思うようになるだろう」。


