経済・社会

2025.08.19 12:15

「77年前のミュンヘン会談の再来」は何とか回避、アラスカ会談

Photo by Andrew Harnik/Getty Images

今回、欧州諸国の大半は、過去の宥和政策のもたらした惨禍を教訓に、ウクライナに寄り添う姿勢を見せ、欧州の安全保障は欧州諸国が形作るべきとの決意を見せた。ロシアによるウクライナ侵攻を巡っても、ゼレンスキー氏は12日、キーウで記者団に「我々には3回の会談が必要だ。(ロシア・ウクライナの)二国間会談が2回と、(米国を含む)3カ国会談が1回。おそらく3カ国会談の後で(終戦という)結果が得られる」と述べ、ウクライナ抜きでの和平交渉に強く反発した。ロシアが主張している、東部ドネツク州とルハンスク州からのウクライナ軍の撤退についても「私たちは(東部地域から)離れないし、離れられない」と訴えた。さらに、ウクライナの安全保障を担保する制度をどのように用意するかにも関心が高まる。

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そのうえで、細田氏は「ミュンヘン会談の融和策は、結果的に米ソが第二次世界大戦後の国際秩序を形成するパワーシフトをもたらしました。戦力不足に悩むドイツも戦争準備も政治意思も欠如していた英仏も、戦後秩序形成の流れに関与できなくなる予兆であった点に注目すべきです」と語る。細田氏は、今回の米ロ主導によるウクライナ和平の動きについて「ウクライナ戦争後の国際秩序が、関税をめぐり国際的な評価と影響力が低下した米国でも、戦争で国力と国際評価が大幅に下がったロシアでもなく、大きな損失を被っていない中国を中心に形成される可能性を暗示させる」とも語る。

戦後80年を迎えた日本では一貫して「反戦平和」が語られてきた。同時に、それはしばしば「日本だけが戦争に巻き込まれなければよい」という「一国平和論」ではなかったか、という指摘がある。ロシアによるウクライナ侵攻直後でも、日本の一部では「犠牲者を増やさないために、ウクライナは領土をあきらめてでも停戦に応じるべきだ」という主張が見られた。

一方、「何でも介入すればよい」というものでもないだろう。「自衛隊は台湾有事に介入すべきだ」という意見は、日本の安全保障政策を根本的に変更し、日中の全面衝突に向かう危険もはらむ。地域同盟国に何でも負担させようとするのがトランプ政権だ。チェコスロバキアを見捨てた英国やフランスのように、「日中が全面衝突した後に、後ろを振り返ったら米国はいなかった」という状況も十分予想される。どのような議論に収斂させるかはともかく、アラスカ会談を「対岸の火事」とみることだけは避けた方がよさそうだ。

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文=牧野愛博

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