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2025.08.29 11:00

多様性こそ事業成長の鍵──女性VCと女性起業家が切り拓く新たな投資の形

スタートアップやベンチャーキャピタル(以下、VC)を取り巻く環境が大きく変化してきた一方で、女性起業家や女性ベンチャー・キャピタリストの存在はまだまだ少数派だ。インパクト投資が注目される今、社会起業家や投資家としてスタートアップ・エコシステムの課題感をどう感じているのか。女性VCと女性起業家が語り合った。


今回の参加者:

赤木円香◎AgeWellJapan代表取締役CEO。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、味の素に入社。2020年に「Age-Well社会の創造」を掲げ、MIHARU(現AgeWellJapan)を創業。シニア世代のウェルビーイングを実現する孫世代の相棒サービス「もっとメイト」や多世代コミュニティスペース「モットバ!」を運営。法人や自治体向けに、シニアDXやシニアWell-being事業の企画・運営を支援。

加藤由紀子◎SBIインベストメント取締役執行役員 CVC事業部長。ブリストル大学社会科学・法学部政治学修士。青山学院大学大学院国際マネジメント研究科修了。アイエヌジー証券投資銀行部門を経て、2002年、SBIグループのバイオ・ヘルスケアVCの立ち上げに参画。05年にSBIインベストメントに転籍、19年にCVC事業部長、23年に取締役執行役員に就任。

小木曽麻里◎SDGインパクトジャパン代表取締役Co-CEO。東京大学経済学部卒業。タフツ大学フレッチャー校修士。世界銀行、笹川平和財団、ファーストリテイリンググループなどを経て、2021年から現職。インパクト投資、社会起業家支援、インクルーシブビジネスの促進などSDG実現のためのビジネス、特にSDGファイナンスに幅広く携わる。

田村菜津紀◎グロービス 代表室 ベンチャー・サポート・チーム KIBOW社会投資ファンド プリンシパル。早稲田大学人間科学部卒業後、ニコンに入社。新事業開発本部を経て経営戦略本部CVCチームに所属。リクルートを経て2019年からグロービスに参画し、G-STARTUPの立ち上げに従事。現在は、KIBOW社会投資ファンドを通じて、社会起業家への投資と経営支援を行うと同時に、広くスタートアップエコシステムビルディングの活動に力を注ぐ。

――VCとしてのこれまでのキャリア、VC領域に興味を持った経緯を教えてください。

加藤:私は、SBIインベストメントで、CVCファンド運用の事業責任者を務めています。ベンチャー・キャピタリストとしては、2002年から約23年のキャリアがあります。もともとは国際協力の仕事に興味があり、イギリスの大学院で開発経済学を学んでいました。その中で、よりよい社会をつくるためには個人の経済的な自立が不可欠だと実感。そういった社会の実現につながる仕事として金融機関に惹かれ、ヨーロッパ系の投資銀行に入りました。そこでベンチャー企業が資金調達によって成長していく過程を目の当たりにし、起業家のサポートを通じて成長企業を世に送り出していく仕事は素敵だなと、VCの世界に興味を持つようになりました。

SBIインベストメント取締役執行役員 CVC事業部長の加藤由紀子
SBIインベストメント取締役執行役員 CVC事業部長の加藤由紀子

小木曽:私は2021年にSDGインパクトジャパンを立ち上げ、現在は海外のVCとともにアグリテックやサステナブルテックのファンド運営を行っています。世界銀行に籍を置いていたときに、社会課題になかなかお金が流れないことを痛感してきました。社会起業家の支援にもVCはなかなか振り向かない。それならば、インパクトマインドの強いVCがあればいいのだ、と設立に至りました。

田村:私はKIBOW社会投資ファンドで社会起業家への投資や経営支援を行っています。VCという職業との出会いは、新卒で入ったニコンから始まっています。新規事業開発本部に配属されたのですが、事業づくりは難航するばかり……。社内の人材だけではなく、社外の起業家たちやVCとニコンの技術を使って事業化していくモデルがあればいいのでは。そう考え、CVCとアクセラレータープログラムを立ち上げました。始めてみると、社内外から新たな事業アイデアがどんどん出てきました。彼らを支援することには大きな充実感があり、以来スタートアップ支援のエコシステムづくりに長く携わっています。

――社会起業家として、赤木さんが起業を目指したきっかけや思いもお聞かせください。

赤木:私は17歳のときに、途上国の素材や技術を使ったアパレルメーカー「マザーハウス」の山口絵理子さんの著書を読んで、“社会起業家”の存在を知りました。社会課題の解決とビジネスの両立を実現するあり方に衝撃を受け、山口さんの姿を追うようにSFC(慶應義塾大学総合政策学部)に入学しました。ただ、在学中に人生をかけたいと思うミッションやビジョンを見つけられないまま就職活動の時期になってしまった。担当の教授から、「グローバル展開をしていて日本にヘッドを持つ大企業で社会勉強をしなさい」と言われ、味の素への入社を決めました。

起業のきっかけは、祖母が倒れたことでした。当時86歳だった祖母を介護しているなかで、「手伝ってもらってごめんね。長く生きすぎちゃったかしら」とつぶやかれたときに、人生の先輩たちが、こんなふうに肩身の狭い思いをして生きる社会はおかしい、と思ったんです。高齢社会における生きがい喪失という課題に向き合おうと、シニアのWell-Being領域で起業を決め、今年6期目を迎えました。

AgeWellJapan代表取締役CEの赤木円香
AgeWellJapan代表取締役CEOの赤木円香

――VCに求められる役割は日本経済と合わせて大きく変化してきたように感じます。ここ20年の変化や、女性のVCや起業家を取り巻く環境について、みなさんが感じる課題とともに教えてください。

加藤:私がVCのキャリアをスタートした2002年からの変化を振り返っても、VCに対するイメージは劇的に変化したと感じます。08年のリーマンショック以降はVCにとって暗黒時代でしたが、12年のアベノミクスが掲げた成長戦略で状況は一変します。イノベーションの創出や社会課題解決が重視され、VCが「イノベーション創出のエコシステムを作る存在」として注目されるようになり、VCファンドへの資金も集まるようになりました。かつての「リスクマネーの供給者」というVCのイメージは、今ではイノベーション創出のエコシステムづくり、社会課題解決に向けた仕組みづくりの担い手というポジティブなものへと変わってきていると感じています。

小木曽:一方で、女性のVCや起業家は、増えてきているとはいえまだまだ少数派ですね。VCにおける女性の割合は15.6%で、リーダー層は7.4%(※1)です。つまり男性が92.6%という、非常にアンバランスな状況が続いています。

田村:VCに女性が少ないことで、「女性起業家への投資がなかなか進まない」という課題は今も明確にあります。例えば女性を対象としたビジネスをしている場合、課題感を具体的に理解されにくい、という壁があります。また、成功モデルのプロファイリングに男性起業家が圧倒的に多いため、女性起業家で少し語り口調が柔らかい方がいると、「この人は本当にやり切れるのか」と疑問に思われてしまう。ジェンダーバイアスはいまだに根強くあります。

小木曽:投資検討する側に女性VCが複数いることで、より多様な視点で起業家を評価しやすくなりますよね。実際にVCに女性の意思決定者がいると、女性起業家への投資が3倍多いというデータ(※2)もあります。

赤木:私もいち女性起業家として、女性投資家に出資していただきたい、という気持ちが強くあります。決して性別にこだわっているわけではなく、起業家は「ビジョン共感とサービス愛を同じように持ってくれる投資家」を求めています。例えば生理や不妊治療などを対象にしたサービスの場合、どうしても女性のほうが共感しやすいので、同じ熱量で課題感を共有できる女性投資家はいないかな、と探したくなるのが自然なんです。

小木曽:社会課題の担い手を見ていくと、介護や子育て、教育などあらゆる分野で、圧倒的に女性が多いんです。現場の声が意思決定層に伝わらなければ、本当の社会課題は見えてきません。例えば昨今では、男性の一般体型に合わせて作られたシートベルトでは、女性のほうが事故時の死亡率が高くなることがわかっています。マイノリティの現場感を持つことができれば、身の回りにさまざまな課題が転がっていることが見えてきます。今後は、社会課題を考慮に入れないビジネスはなくなっていくでしょうし、そう変化していくことを期待しています。

SDGインパクトジャパン代表取締役Co-CEOの小木曽麻里
SDGインパクトジャパン代表取締役Co-CEOの小木曽麻里

――起業家・VCの双方から考える「起業家とVCとの理想の関係」をお聞かせください。

赤木:起業家は、一つの領域に過集中になりがちです。一方で、社会課題を広く見ているのがVC。一点集中で熱量を注ぐ私のような起業家にとって、バランス力に優れた投資家の存在は必要不可欠です。それを実感したのが、2023年に弊社の資金がショートしそうになったときのこと。当時入るはずだった融資の話がなくなり、私はパニック状態で担当VCに電話をかけました。私は事業に重心をかけていたので、正直経営についてはまだまだ未熟だったんです。電話口でじっと私の話を聞いた投資家の方は一言、「落ち着いてください。こういうときのために投資家はいます」と言ってくれたんです。そのうえで、資金を補填する具体的な実務をレクチャーしてくれました。あの言葉がなければ今はなかったと思うほど、投資家は事業そのものだけでなく、起業家の心を救ってくれる存在だと思っています。

小木曽:赤木さんのエピソードは、投資家と"共感"を築けていたからこそ生まれたものですね。日頃からコミュニケーションをしっかりとって、自分がやっていることを伝え続けていた。最終的にVCを突き動かすのは、ビジョンやミッション、そして起業家その人に対する共感があるかどうかなのだと実感します。

田村:社会課題の解決という大きなゴールを目指す上で、起業家は、木と森の両方を見ながら事業を進めていく必要があります。そんなときに、コーチング的なサポートができるのも投資家の役割の一つだと考えています。私が心がけているのは、起業家ご本人が使っていた言葉を意識的に使うことです。日々の業務に追われる中で、本当に生み出したいインパクトに繋がる活動から少しずつ軌道がずれたり、短期的な課題解決に意識が向きすぎたりしてしまうことは珍しくありません。そんな時に、「言われてみれば、当初はそんな話をしていましたね」と初心に立ち戻ってもらうことで、伝えられるメッセージもある。同じ船に乗りながら、時々コーチのような距離感で関わることも、起業家と投資家の一つの関係の在り方かな、と思っています。

グロービス 代表室 ベンチャー・サポート・チーム KIBOW社会投資ファンド プリンシパルの田村菜津紀
グロービス 代表室 ベンチャー・サポート・チーム KIBOW社会投資ファンド プリンシパルの田村菜津紀

――最後に、起業家やVCを目指す方へのメッセージをいただけますか。

赤木:起業家というと、IPOして時価総額〇億円を目指す……という「成功」をイメージする人が多いかもしれません。でも、実際にはいろんな選択肢があり、自分が抱く違和感を解消しようとコツコツと事業を伸ばしながら社会問題に向き合っている人たちがたくさんいます。一歩踏み出してみれば、地道な日々に手を差し伸べてくれる投資家がいるということも本当に心強いです。やってみたらなんとかなるよ、と伝えたいですね。

加藤:VCの仕事は、まさに赤木さんのようにチャレンジを続けている人に出会える仕事。新しい事業を作ろう、プロダクトを作ろうという熱量に触れることで、自分自身の圧倒的な成長にもつながります。

田村:起業家一人ひとりの「世の中を良くしていきたい」という思いを支援できる、本当に面白い仕事。よりよい社会を作りたいと強く思う人ほど、VCやスタートアップ支援の仕事に向いていると思います。

小木曽:働き方のフレキシビリティが効く仕事として、VCは女性にも向いているなと思っています。AI活用の時代になれば、長時間働けることが価値ではなくなってくる。起業家への共感力や社会課題への理解の深さなど、女性VCならではの価値を発揮できるシーンも多くあります。キャリアの選択肢として、起業家やVCを目指す方が増えていくことを期待したいですね。


東京都 スタートアップ・エコシステムにおける女性活躍推進事業
https://women-startup-vc.metro.tokyo.lg.jp/

東京都は、女性起業家やベンチャーキャピタル(VC)業界での女性の活躍を後押しし、多様性に富んだスタートアップ・エコシステムの形成を目指す「スタートアップ・エコシステムにおける女性活躍推進事業」を実施しています。

女性起業家に対しては、資金調達や事業拡大に向けた講座、VCとのマッチング機会、海外展開・テクノロジー導入に関する勉強会など、実践的な支援を実施しています。

また、女性キャピタリスト等に向けた、キャリア形成やジェンダーギャップ等に関する勉強会や、VC・スタートアップ業界に関心を持つ学生を対象としたイベントも開催し、起業家・投資家・支援者を含めたスタートアップ・エコシステム全体における女性の活躍を後押しします。

※1 引用:「Tokyo Women in VC」による「国内女性VCと女性起業家に関するレポート」2024年
※2 引用:バブソン大学による「Diana Report Women Entrepreneurs 2014: Bridging the Gender Gap in Venture Capital」

promoted by 東京都 / text by Rumi Tanaka / photographs by Takayuki Abe / edited by Kaori Saeki