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2025.08.21 09:45

量より質の時代。では「高い質」に欠かせない要素とは

(Photo by Stefano Guidi/Getty Images)

白トリュフ博物館前で研修参加者とイベルティ(右側奥の男性)
白トリュフ博物館前で研修参加者とイベルティ(右側奥の男性)

自然条件や複数の要素間の関係に左右されるがゆえに、高い質の有難さを率直に受け入れようと思える。単一の要因によってそのような価値が生まれるわけがない。必ず複数の領域とレイヤーが複雑に絡み合います。ある部分は戦略的であり、ある部分は戦略レベルを越えています。そして、「越えるであろう」ことも想定してランドスケープデザイナーは風景を構想する。廣瀬さんの文章は次のように続きます。

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「アルバでは、トリュフのコミュニティや地域を再編する建築家やデザイナーたちが、自らの手で未来を設計していた。そこには、自らの土地と歴史に対する深い愛着と、その場に対する複層的な視点があった。彼らと対話をするなかで、全体を視るとはどういうことかを身体的に教えられたように感じる。関係する目に見えない層をどこまで編み出し、目に見えるものとして落とし込むのか、建築家やランドスケープデザイナーの偉業を感じることになった」

自然の恵みを軸においた食文化がテリトーリオ・ランゲの核をつくりながら、そのコアは農業や食を越えた工業領域まで影響を及ぼしています。実際、食以外のビジネスをしている人たちが、ビジネスの考え方が食のエコシステムと密接な関係にあると自覚しているのです。

ひとつ興味深いエピソードがあります。

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1980年代、世界のデザインシーンを変えたメンフィスの拠点が今はアルバにあります。そのグループ会社、イタリアンラジカルデザイングループのCOOが2025年はじめ、COOを辞し、白トリュフフェアの代表に就任しました。前述したアルバ出身のデザイナー、アクセル•イベルティさんです。
 
イベルティさんの転身は、ランゲというテリトーリオがさまざまな分野とレイヤーで高い質をバックアップしている証になっていると思います。「量ではなく質」とキャッチフレーズのような表現が世の中には流布していますが、高い質を作り出す、またはそれを維持するにはそれ相応の環境が必要です。しかし、「相応の環境」とは決して経済的投資によるものではないのです。

前澤さん、高い質を確保する環境条件について、どのようなご意見をおもちですか?

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文=安西洋之(前半)・前澤知美(後半)

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