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2025.08.19 11:00

ワービー・パーカーを超えろ、老眼鏡をセクシーに変えた仏「Izipizi」創業者たちの戦略

Shutterstock.com

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2010年に創業されたフランス発のアイウェアブランド「Izipizi(イジピジ)」の共同創業者3人が、ニューヨークのオフィスで一枚の写真に見入っていた。iPadに映し出されていたのは、グザヴィエ・アゲラ、シャルル・ブラン、クエンティン・クチュリエが同社を立ち上げる6年前の17歳の時に撮影された一枚だ。イジピジは急成長を遂げ、年間売上高は今やおよそ6000万ドル(約88億5000万円)に達する。

「私たちはアイウェア業界とは縁がなかったが、自分たちで会社を立ち上げたいという強い想いと、顧客の声に耳を傾ける好奇心と姿勢があった」と、アゲラは振り返る。「当時の市場には、セクシーなブランドが存在しなかった。だからこそ、私たちはクールなブランドを作ろうと決意した」とクチュリエは付け加えた。

2010年、3人はパリで「See Concept(シーコンセプト)」という、マスティージ(手頃な価格帯でありながらラグジュアリー感のある商品)ブランドを立ち上げた。その数カ月前には、米国で「Warby Parker(ワービー・パーカー)」がローンチされていたが、両社の戦略は対照的だ。どちらのブランドも、プレミアム感のある老眼鏡やサングラス、ブルーライトカットメガネを、ファッション感度の高い顧客層に向けに手の届きやすい価格で提供している。価格帯は、イジピジが50〜75ドル(約7370円〜約1万1000円)に設定されているのに対し、ワービー・パーカーは度付きメガネを95ドル(約1万4000円)から販売している。一方、販売手法は明確に分かれる。ワービー・パーカーがD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)モデルを採用しているのに対し、シーコンセプトは実店舗を中心に展開している。これは、各市場における消費者ニーズの違いを反映したものだ。米国の消費者は、自宅でメガネを試着できる利便性を重視する一方で、フランスの消費者は、リアル店舗での購買体験を重視する傾向がある。

ワービー・パーカーの昨年の売上高は7億7000万ドル(約1140億円)に達し、イジピジを大きく上回っている。しかし、その事業展開は米国とカナダに限定されている。一方、イジピジがベンチマークしているのは、スイスの時計ブランド、スウォッチだ。1980年代初頭に誕生した同社は、手頃な価格で世界中に愛用者を持つ一方で、オメガ、ブレゲ、ブランパンなどの高級時計ブランドを傘下に持つ。

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編集=朝香実

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