だが、ロシアがベラルーシ経由でウクライナに対して行った攻撃は失敗に終わった。侵攻の初期段階を経て、ウクライナ軍と義勇軍部隊は国内全土で反攻作戦を開始。2022年の夏までにウクライナ軍は首都キエフの防衛に成功し、中部と北部の全域を解放した。これにより、ロシア軍はベラルーシを経由したウクライナ北部への攻撃を断念せざるを得なくなった。代わりにロシア軍はウクライナの南部と東部への攻撃に焦点を当てるようになった。
それ以降、ロシア軍は多大な損失を被っている。ウクライナ国防省と英国防省がそれぞれ独自に検証した報告書によると、ロシア軍はこれまでに100万人以上の死傷者を出している。同軍はさらに軍事装備品と機器で数千億円を失っている。こうした莫大な損失を背景に、プーチン大統領はルカシェンコ大統領に支援を求めた。
侵攻を開始して以降、プーチン大統領はルカシェンコ大統領に対し、ベラルーシ軍をウクライナに派遣するよう圧力をかけてきた。これに対し、ルカシェンコ大統領は自国の領土にプーチン大統領がロシア軍兵士を送ることや、ベラルーシからウクライナへロシアの軍事物資を輸送することは許可したものの、自国の兵士をウクライナに派遣するまでには至っていない。ルカシェンコ大統領は、ベラルーシ軍をウクライナに派遣すれば事態が悪化すると考えているのだ。
同大統領はウクライナに派兵していないが、ベラルーシ軍の中には自国が戦争に関与していることに抗議する者もいる。実際、ウクライナ侵攻開始以降、ベラルーシでは数十人の軍人が辞職した。ベラルーシ軍を離れ、祖国防衛のために戦うウクライナ軍を支援する義勇軍に加わった軍人もいる。ベラルーシで実施された世論調査では、国民の大半がロシアによるウクライナ侵攻を支持していないことが明らかになった。この結果を踏まえ、ルカシェンコ大統領はウクライナに派兵しないことを決めたのだ。
しかし、ザパト2025がどのように展開されるかは不透明だ。これまでのところ、ルカシェンコ大統領はウクライナ侵攻への援軍を求めるプーチン大統領の要請を拒否してきた。だが、プーチン大統領がウクライナ侵攻での勝利に固執する中、同大統領の要求をルカシェンコ大統領がいつまではねのけられるかは定かではない。
言い換えれば、来たるザパト2025を巡っては、不確実性が漂っているということだ。どのような事態が発生しても、ウクライナとNATOは起こり得る攻撃に備えて必要な対策を講じるため、状況を監視し続けていくだろう。


