トランプと“忖度”が揺るがす米CBSーー半世紀続いた不屈の報道の崩壊か

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当然ながら、この判断は報道現場に深い失望をもたらした。ニュース部門トップの社長と「60ミニッツ」編集長は、こうした経営判断を受け入れられず、すでにCBSを去っている。

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エドワード・R・マロー時代から権力に屈しない調査報道の象徴であったCBSが、経営の忖度によって崩れつつある現状は、単なる時代の変化として片付けられるものではない。

日本でもあった「忖度」の事例

日本でも、第二次安倍政権下で似たような事例があった。真相は明らかにされていないが、NHK「クローズアップ現代」で23年間キャスターを務めた国谷裕子氏が、菅義偉官房長官に集団的自衛権行使容認について厳しく問い続けた結果、政権の圧力がNHK幹部にかかり、 2016年3月に降板に追い込まれたとされる。

また、同時期に、TBS「NEWS23」で2013年からアンカーを務めた毎日新聞特別編集委員の岸井成格氏も、安倍政権を毅然と批判した後に退任したと報じられた。その後は批判を警戒してか、自民党の衰えからか、こうした降板劇は表面化していない。

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CBSのようにネットメディアが台頭し、視聴者が流出するなか経営の安定を優先し、放送局が政権に配慮し、報道内容を自己規制するリスクは日本でも高まっている。報道の自由は、一度失われれば取り戻すのは難しい。CBSがたどった道を、日本の放送局は避けられるのか。それを決めるのは、現場と視聴者双方の姿勢にかかっている。

文=北谷賢司

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