ヘルスケア

2025.08.21 09:15

フルーツジュースが糖尿病の発症を抑制か 遺伝的リスクに対抗する可能性

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生活習慣病である2型糖尿病の患者は、とにかく甘いものがNG。定期的な受診の際に先生は「フルーツは気をつけてね」と、果糖の影響を注意を促してくれる。血糖値が気になる人の間では、フルーツは危険な食べものだとの認識が定着している。ところが、週に1〜2杯のフルーツジュースを飲む人は、飲まない人にくらべて糖尿病の発症率が低いという調査結果が公表された。にわかには信じがたいが、本当なのだろうか。

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東京科学大学大学院 医歯学総合研究科 生命情報応用学分野の河原智樹助教と、公衆衛生学分野の藤原武男教授らによる研究チームは、国内13の大学や病院が参加する大規模調査「J-MICC研究」(日本多施設共同コーホート研究)に登録された1万3769人分のデータを分析し、フルーツジュースを飲む頻度と2型糖尿病との関連を調べた。

その結果、「ポリジェニックリスクスコア」(PRS:遺伝的な糖尿病発症リスクの指標)が高い、つまり生まれつき糖尿病になりやすい体質の上位2割の人たちに限っては、フルーツジュースをまったく飲まない人に対して、週に1回未満飲む人では約2割、週に1回以上飲む人ではなんと約5割、糖尿患者が少なかった。

2型糖尿病リスクにおけるPRSとフルーツジュース摂取との関係。横軸がPRS。右にいくほど発症リスクが高い。縦軸は患者のオッズ比。値が小さいほど糖尿病患者が少ない。
2型糖尿病リスクにおけるPRSとフルーツジュース摂取との関係。横軸がPRS。右にいくほど発症リスクが高い。縦軸は患者のオッズ比。値が小さいほど糖尿病患者が少ない。

ただし、PRSが低いか中程度の人たちでは、有意な違いが見られなかった。

これはあくまで統計的な調査結果であり、今後は果汁が糖尿病の発症を実際に減らすのか、また果汁の成分が糖代謝関連遺伝子にどう関係するのかを分子レベルで解明していく必要があるということだ。だがこの研究結果は「遺伝的リスクが高い層においては、適量の果汁摂取がむしろ予防的に働く可能性を示しており、画一的な制限を見直すための科学的根拠」になるという。そしてゆくゆくは、PRSに基づいた個人ごとの精密栄養ガイドラインを策定し、「保健指導や食品産業におけるイノベーション」への活用を目指すと研究チームは話している。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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